岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人間はかくあるべきと信じられる感動作

2020年12月03日

キーパー ある兵士の奇跡

©2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

【出演】デヴィッド・クロス、フレイア・メーバー、ジョン・ヘンショウ、デイヴ・ジョーンズ
【監督】マルクス・H・ローゼンミュラー

「戦争は憎むが人は憎まず」

 本作は、ドイツ軍の兵隊でナチス党員だったバート・トラウトマンが、捕虜となったイギリスでサッカーによって受け入れられ、やがて英国サッカー界のスターになっていった実話である。

 王道のヒーローものだが、道徳の教科書に乗っているような鋳型にはまった美談ではない。新自由主義以降の格差と分断が広がった世界、トランプに象徴される自己中心主義やコロナ下での身勝手な正義中毒などに対して、同じ過ちを繰り返すのはやめようよと、静かに物語るヒーローものである。

 第二次大戦後以降の大義なき戦争は、ただただ憎しみの連鎖により、終わりなき状態となっている。もちろん、おびただしい戦死者を出した第二次大戦でも、敵国を許せない感情はあったであろう。

 本作は、「戦争は憎むが人は憎まず」という観点で作られている。反抗的な捕虜には屈辱的な懲罰が与えられるが、一方で収容所内ではサッカーが出来た。他の収容所映画では、合唱団やオーケストラを描いたものもあったが、ヨーロッパはサッカーがいい。そこでファインプレーを連発するトラウトマン(デヴィッド・クロス)は、地元セントヘレンズタウンのアマチュアサッカーチームの監督ジャック(ジョン・ヘンショウ)に目を付けられる。

 彼は、トラウトマンがドイツ人だなんてことを一向に気にしない。サッカーが上手い一個人として、自チームにオファーしたのだ。憎しみも偏見ももたないジャックの姿に、人間のあるべき姿を描き出している。

 しかし味方よりも敵が多い事は確かだ。激しいバッシングに晒される中、チームの為に必死で闘う彼の姿は、やがて受け入れられていく。彼は監督の娘と結婚しイギリス定住を決意する。プロサッカーチーム「マンチェスター・シティFC」も、彼の高い身体能力やクレバーな判断力、そして何より誠実な人柄により、周囲の懸念を押し切って入団させる。

 人間はかくあるべきと信じられる感動作だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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