岐阜新聞 映画部

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血と血で争う激しい抗争を描いた重厚な力作

2020年11月27日

シチリアーノ 裏切りの美学

©IBC MOVIE/KAVAC FILM/GULLANE ENTRETENIMIENTO/MATCH FACTORY PRODUCTIONS/ADVITAM

【出演】ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ルイジ・ロ・カーショ、マリア・フェルナンダ・カンディド、ファウスト・ルッソ・アレジ
【監督・脚本】マルコ・ベロッキオ

良い悪いの視点でなく、なぜそうせざるを得なかったのかを解釈し描いていく

 本作は、シチリアの州都パレルモを拠点とする地元のマフィア・パレルモ派と、シチリア島の小さな田舎町コルレオーネ(映画「ゴッドファーザー」のルーツ)から進出したコルレオーネ派との、血と血で争う激しい抗争を描いた実録映画である。

 本作の主人公でパレルモ派の重鎮ブシェッタ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)は、古いマフィアの代表だ。生来の女好きで、結婚離婚を繰り返し子どもの数も多い。ワルではあるがマフィアとしての矜持を持っており、傍若無人な若い奴らのやり方には腹を据えかねている。

 そんな彼らに、新興勢力で武闘派のコルレオーネ派は、勢力拡大のため容赦なく襲ってくる。映画では、おびただしい犠牲者の数が画面上でカウントされ、死が「名誉」でなく単なる「数字」としかみられない虚しさを表していく。映画前半の凄惨な殺戮シーンや拷問の場面は、目をそむけたくなるほどの迫力だ。

 ブシェッタは、イタリアとブラジルを行ったり来たりしながら何とか自分の身を守る。そしてブラジル当局からの取り調べによる拷問にも屈せず、「血の掟」は守り抜く。

 しかし信頼した仲間からは裏切られ、敵に家族や友人を殺されるに及んで、ブシェッタは決意する。生涯マフィア撲滅に身を捧げ、最後は殺されてしまったファルコーネ判事に協力し、洗いざらい組織の中身を供述したのだ。

 でもそれは「血の掟」に背いたわけでなく、麻薬取引や一般人も巻き込む殺人の横行など、最近のマフィアのやり方を見て、それを正すため司法の要求に応じただけなのだ。

 後半の大裁判は、スリリングな法廷モノとしてはいささか物足りないが、静かで厳粛な日本の裁判とは違って、賑やかで騒々しいイタリア人っぽいところが誠に興味深い。

   81歳のマルコ・ベロッキオ監督は、ブシェッタの行為を良い悪いの視点でなく、なぜ彼がそうせざるを得なかったのかを解釈し描いていく。重厚な力作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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