岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品シチリアーノ 裏切りの美学 B! 歴史的なマフィア裁判を描いた実録映画 2020年11月24日 シチリアーノ 裏切りの美学 ©IBC MOVIE/KAVAC FILM/GULLANE ENTRETENIMIENTO/MATCH FACTORY PRODUCTIONS/ADVITAM 【出演】ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ルイジ・ロ・カーショ、マリア・フェルナンダ・カンディド、ファウスト・ルッソ・アレジ 【監督・脚本】マルコ・ベロッキオ 血の掟に背いた男のプライドを賭けた闘い 映画に嵌りはじめた1970年代前半、マフィア映画が注目された時期があった。アカデミー賞も受賞した『ゴッドファーザー』(フランシス・F・コッポラ監督/1972)がその火付け役だったが、他にも『バラキ』(テレンス・ヤング監督/1972)、『コーザノストラ』(フランチェスコ・ロージ監督/1973/日本公開74)などのヒット作が生まれた。マフィアはイタリア系のギャングの呼称だが、ギャング映画は古くからあるから、新しいジャンルではない。また、フィルムノワールと呼ばれる犯罪映画にもギャングは登場する。日本映画にも任侠ものとかヤクザ映画があるが、それと同一視するのはあまり適切ではないかも知れない。 『ゴッドファーザー』はそれまでのギャング映画とはひと味違っていた。血生臭い残忍なシーンが登場するのに、深い情感に包まれた荘厳な雰囲気さえ感じる格調高い映像は圧倒的だった。 1980年代のはじめ、イタリアのシチリアではマフィアの組織間の権力闘争による緊張が高まっていた。パレルモ派の大物トンマーゾ・ブシェッタ(ピエルフランチェスコ・ファブィーノ)は抗争の仲裁を画策するが、失敗に終わりブラジルへ逃走する。残された家族や仲間は、敵対するコルレオーネ派の報復によって次々と殺害されていった。 ブラジルで逮捕されたブシェッタは、イタリアに強制送還される。マフィア撲滅に情熱を燃やす判事のファルコーネは、ブシェッタに捜査協力の依頼=司法取引を持ちかける。腐りきった組織に没落した組織コーザ・ノストラに失望していたブシェッタは、その取引に応じる決断をするが、それは組織の固い信頼の証"血の掟"に背くことだった。 『シチリアーノ 裏切りの美学』は実録ものの定石を踏まえた犯罪映画だが、ハイライトとなるのは裁判シーンにある。裁判官と対峙する証言者のブシェッタ。その後方には弁護団と、さらに檻に入れられた被告たちが、裏切者のブシェッタに罵声を浴びせる。同一空間で繰り広げられる異様な情景は、リアルな再現であるというのが凄い! 監督は81歳の巨匠マルコ・ベロッキオ。緩みない緊張感が生みだす重厚さに衰えは微塵もない。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年12月04日 / おしょりん メガネ作りを地域産業にした挑戦と情熱の物語 2023年12月04日 / おしょりん 増永兄弟の艱難辛苦のサクセスストーリー 2023年11月29日 / 私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰? 権力と闘う信念の女性の生き様で描く政治映画 more 2017年12月21日 / 飯田トキワ劇場(長野県) 雄大な山々に囲まれたスモールタウンの映画館 2019年11月27日 / 前橋シネマハウス(群馬県) 今まで手つかずだった休館した映画館に再び映画の灯が… 2020年10月14日 / シネマスコーレ(愛知県) 若松孝二監督が遺した学校という名の小さな映画館 more
血の掟に背いた男のプライドを賭けた闘い
映画に嵌りはじめた1970年代前半、マフィア映画が注目された時期があった。アカデミー賞も受賞した『ゴッドファーザー』(フランシス・F・コッポラ監督/1972)がその火付け役だったが、他にも『バラキ』(テレンス・ヤング監督/1972)、『コーザノストラ』(フランチェスコ・ロージ監督/1973/日本公開74)などのヒット作が生まれた。マフィアはイタリア系のギャングの呼称だが、ギャング映画は古くからあるから、新しいジャンルではない。また、フィルムノワールと呼ばれる犯罪映画にもギャングは登場する。日本映画にも任侠ものとかヤクザ映画があるが、それと同一視するのはあまり適切ではないかも知れない。
『ゴッドファーザー』はそれまでのギャング映画とはひと味違っていた。血生臭い残忍なシーンが登場するのに、深い情感に包まれた荘厳な雰囲気さえ感じる格調高い映像は圧倒的だった。
1980年代のはじめ、イタリアのシチリアではマフィアの組織間の権力闘争による緊張が高まっていた。パレルモ派の大物トンマーゾ・ブシェッタ(ピエルフランチェスコ・ファブィーノ)は抗争の仲裁を画策するが、失敗に終わりブラジルへ逃走する。残された家族や仲間は、敵対するコルレオーネ派の報復によって次々と殺害されていった。
ブラジルで逮捕されたブシェッタは、イタリアに強制送還される。マフィア撲滅に情熱を燃やす判事のファルコーネは、ブシェッタに捜査協力の依頼=司法取引を持ちかける。腐りきった組織に没落した組織コーザ・ノストラに失望していたブシェッタは、その取引に応じる決断をするが、それは組織の固い信頼の証"血の掟"に背くことだった。
『シチリアーノ 裏切りの美学』は実録ものの定石を踏まえた犯罪映画だが、ハイライトとなるのは裁判シーンにある。裁判官と対峙する証言者のブシェッタ。その後方には弁護団と、さらに檻に入れられた被告たちが、裏切者のブシェッタに罵声を浴びせる。同一空間で繰り広げられる異様な情景は、リアルな再現であるというのが凄い!
監督は81歳の巨匠マルコ・ベロッキオ。緩みない緊張感が生みだす重厚さに衰えは微塵もない。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。