岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品浅田家! B! ちょっと変わった写真集から生まれたファミリーヒストリー 2020年11月20日 浅田家! ©2020「浅田家!」製作委員会 【出演】二宮和也、妻夫木聡、風吹ジュン、平田満、黒木華、菅田将暉、渡辺真起子、北村有起哉、野波麻帆 【監督・脚本】中野量太 シャッターを切るまでの想いの違い 三重県津市出身の写真家・浅田政志の写真集「浅田家」は、家族が役柄を演じ、なりきる姿をとらえた写真でなりたっている。そのシチュエーションは消防士であったり、病院であったり、ヤクザであったりする。末息子の要望に応えて、父も母も兄も、時には場や小道具や衣装までを調達する役目を担う。その作品ひとつひとつに込められた情熱を見れば、家族関係の様が良く理解できる。 子供の頃、父親から譲り受けたカメラを手にしたことから写真家を目指す、というのは聞いたことのある設定=状況だが、専門学校入学から卒業後の帰省、プー太郎生活の過程がスケッチ風に描かれている。側から見れば、煮え切らず自信なさげな息子や弟に、付かず離れずで微妙な距離感を保ち続ける。この家族はよく考えれば貴種=奇種なのかも知れない。 そこに救世主の如く現れるのが幼なじみの若菜(黒木華)で、節目節目に政志(二宮和也)に喝を入れる。家族ではないが同様の比重を持った存在であることが分かる。特に、東京での生活における若菜は、時には親(父+母)であり、時に兄のように、頼もしく政志を支える。それは健気に見えるし、際立つのは政志の不甲斐なさである。若菜の決断によって開催された政志の写真の個展により、運命も一気に開かれる。 家族写真によって"木村伊兵衛賞"を受賞するまでの前半は、沈殿しがちな物語をポジティブに転換する軽妙な演出で、陽に導くことに成功している。 そして、その日、2011年3月11日、東日本大震災が発生する。遠く離れた地で揺れを感じた政志は、突き動かされるように、かつて家族の写真を撮った地である東北へ向かう。 被災地で政志は理不尽な運命と対峙する。津波にのまれ、濡れて泥に汚れたスナップ写真を洗う作業は、空洞化した自らの心の再生へと導くものだろうか? この後半部分の変調とも思える様変わりが、かなり重い人の死=不在に関わるだけに、前半の軽やかさとのバランスを欠き、唐突に思えてしまうのは少し残念でならない。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (12)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2017年12月06日 / 岐阜ロイヤル劇場(岐阜県) 昭和の薫りを色濃く残す商店街で古き良き時代の名画に触れる 2019年06月05日 / シネ・ウインド(新潟県) 自分たちの観たい映画を自分たちの映画館で… 2020年12月09日 / 第七藝術劇場(大阪府) ディープな街、十三にある個性派ミニシアター more
シャッターを切るまでの想いの違い
三重県津市出身の写真家・浅田政志の写真集「浅田家」は、家族が役柄を演じ、なりきる姿をとらえた写真でなりたっている。そのシチュエーションは消防士であったり、病院であったり、ヤクザであったりする。末息子の要望に応えて、父も母も兄も、時には場や小道具や衣装までを調達する役目を担う。その作品ひとつひとつに込められた情熱を見れば、家族関係の様が良く理解できる。
子供の頃、父親から譲り受けたカメラを手にしたことから写真家を目指す、というのは聞いたことのある設定=状況だが、専門学校入学から卒業後の帰省、プー太郎生活の過程がスケッチ風に描かれている。側から見れば、煮え切らず自信なさげな息子や弟に、付かず離れずで微妙な距離感を保ち続ける。この家族はよく考えれば貴種=奇種なのかも知れない。
そこに救世主の如く現れるのが幼なじみの若菜(黒木華)で、節目節目に政志(二宮和也)に喝を入れる。家族ではないが同様の比重を持った存在であることが分かる。特に、東京での生活における若菜は、時には親(父+母)であり、時に兄のように、頼もしく政志を支える。それは健気に見えるし、際立つのは政志の不甲斐なさである。若菜の決断によって開催された政志の写真の個展により、運命も一気に開かれる。
家族写真によって"木村伊兵衛賞"を受賞するまでの前半は、沈殿しがちな物語をポジティブに転換する軽妙な演出で、陽に導くことに成功している。
そして、その日、2011年3月11日、東日本大震災が発生する。遠く離れた地で揺れを感じた政志は、突き動かされるように、かつて家族の写真を撮った地である東北へ向かう。
被災地で政志は理不尽な運命と対峙する。津波にのまれ、濡れて泥に汚れたスナップ写真を洗う作業は、空洞化した自らの心の再生へと導くものだろうか?
この後半部分の変調とも思える様変わりが、かなり重い人の死=不在に関わるだけに、前半の軽やかさとのバランスを欠き、唐突に思えてしまうのは少し残念でならない。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。