岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

中野監督の家族観がよく分かる素敵な家族の話

2020年11月20日

浅田家!

©2020「浅田家!」製作委員会

【出演】二宮和也、妻夫木聡、風吹ジュン、平田満、黒木華、菅田将暉、渡辺真起子、北村有起哉、野波麻帆
【監督・脚本】中野量太

家族のあり様のヒントをいっぱい示してくれている

 厚労省の「国民生活基礎調査」によると、悩みやストレスがある人(46.5%)のうち、原因を「家族との人間関係」と答えた人は、各年齢で平均10%~20%となっている(2010年調)。家族関係で悩んでいる人は少なくない。

 中野量太監督の作品は、いつも家族の映画だ。今までは人間関係に問題を抱えた家族を描いてきたが、今作『浅田家!』は羨ましいほどうまくいっている素敵な家族の話だ。これを特別な家族のレアな物語だとみてしまうのはもったいない。家族のあり様のヒントをいっぱい示してくれているのだ。

 浅田家の家計の中心は看護師の順子(風吹ジュン)、それを主夫の章(平田満)が支える。「オレが稼いでるんだから、オレの言うことを聞け」なんて夫婦でなく、適材適所の役割分担でフラットな関係だ。

 生真面目な兄貴・幸宏(妻夫木聡)は、ヤンチャで定職に就かない弟・政志(二宮和也)にブツブツ言いながらも、撮影交渉に行く。決して恩着せがましくない。

 母は政志に言う。「あんたはやりたいことをやりなさい。で、時々、家族を喜ばせてくれたらそれでいいから、行きなさい」。

 否定せず応援する。嫌味を言わず、押し付けず、決して極めつけない。この映画を観ていると中野監督の家族観がよく分かる。

 コスチューム姿の家族写真を撮る時は、ワイワイ言いながら着替えるわけで、かしこまらない普段の様子が写される。後で楽しく思い出すこともできる。この過程がとてもいいのだ。

 後半、政志は東日本大震災の被災者の写真洗浄のボランティアに行く。最近の写真はデジタルデータが主流だが、紙に焼き付けた写真にはチカラがある。記憶を呼び起こし、いつまでもじっと見ていられる。

 主役の二宮和也さんは、優柔不断だけど愛嬌があり、ほっておけないタイプの政志を飄々と演じて映画をしっかり支えており、彼の代表作がまたひとつ増えた。ニッコリできる家族映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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