岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

深刻な問題もポジティブに描く中野量太監督

2020年11月14日

浅田家!

©2020「浅田家!」製作委員会

【出演】二宮和也、妻夫木聡、風吹ジュン、平田満、黒木華、菅田将暉、渡辺真起子、北村有起哉、野波麻帆
【監督・脚本】中野量太

温かみのあるタッチで描写されている後半は、中野監督ならではの前向きな明るさに救われる

 中野量太は家族にこだわり、ホームドラマを撮り続ける映画監督である。

 彼の作品は、末期癌で余命宣告を受ける母親が主役の『湯を沸かすほどの熱い愛』でも、認知症の父親の介護を描いた『長いお別れ』でも、ユーモアを忘れず、深刻な問題をプラス思考で克服しようとする、温かみのある作風が特徴的だ。

 三重県津市出身の写真家である浅田政志の実話をもとにした、この『浅田家!』もその例に漏れない。

 『浅田家!』の前半では、なりきりコスプレ家族写真で写真家として評価されるまでのエピソードがユーモラスに描かれ、後半では、東日本大震災の被災地での写真洗浄のエピソードが温かみのあるタッチで描写されている。特に、家族を震災で亡くした人々の悲痛なエピソードを採り上げた後半は、中野監督ならではの前向きな明るさに救われる。

 主人公(二宮和也)とその家族(父親役の平田満、母親役の風吹ジュン、兄役の妻夫木聡)のアンサンブルが心地よく、しっかり者のガールフレンドを演じる黒木華と、後半でごく普通の地味な青年をオーラを消して演じた菅田将暉の好演が特に印象に残る。

 ドラマの構成にしっくりとこないところもあるが、中野量太監督らしいホームドラマの佳作に仕上がっている。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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