岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

魔性の女に翻弄される男の運命

2020年10月30日

本気のしるし 劇場版

©星里もちる・小学館/メ~テレ

【出演】森崎ウィン、土村芳、宇野祥平、石橋けい、福永朱梨、忍成修吾、北村有起哉
【監督】深田晃司

"割り切れる"女の強さと"できない"男の哀しみ

 『本気のしるし 劇場版』は、星里もちるの漫画(小学館)を原作にしている。はじめ、テレビドラマとして制作され、去年の秋(10〜12月)に深夜枠(全10回)で放映された。ちょうどその頃、岐阜新聞映画部のイベントで『よこがお』の上映&トークショーがあり、深田晃司監督は放映が開始されるドラマについて少し語っている。

 第1回分はタブレットの画面で観た。30分枠のドラマなのだが、そこには紛れもない映画があった。制作は名古屋のテレビ局メーテレで、映画の実績もあったから、映画版になることを期待して、ドラマ版は1回のみで、あえて観ない選択をした。

 辻一路(森崎ウィン)は、玩具問屋の営業マンとして得意先まわりをこなしている。営業所の同僚の女性社員2人とは深い関係にあった。仕事はそつなくこなしている反面、接待絡みの誘いには「面倒臭い…」と感情を吐露し、どこか真剣にはなりきれない顔も覗かせる。

 若手女性社員のひとり、若手のみっちゃんとの関係は、一方的な積極性に押されているようにも見えるが、拒絶しようとはしない。マンションに帰れば、もうひとりの同僚細川さんが、まるで女房のように待ち構えている。

 主人公の辻の日常と性分をさらっと描いた導入が秀抜。画面構図やカット割りはまさしく映画的なそれで、早くに映画版を期待することになった要因でもある。このドラマ版の第1回分にあたる部分は、その時の記憶とほぼ合致する。

 その後、辻はコンビニで奇妙な行動をとる葉山浮世(土村芳)と出会う。見かけただけ…買い物カゴに自社の玩具が入っていたから…見つからない行き先を尋ねられたから…と、矢継ぎ早に増加する接点は強引だが、踏切での救出劇の最後のだめ押しで、その後の泥沼的な関係を決定づける。

 上映時間232分。辻と浮世の間には個性的な人物が絡んでくる。浮世の夫、消費者金融のヤクザなど、男は謎めいたり浮世ばなれした顔ぶれが並ぶのに、女性は激しい感情を見せる割には、現実的に着地する。妖しい世界に引き込まれること必至!深田映画を堪能できる傑作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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