岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

絶望から作家を目指した青年の成長譚

2020年10月27日

マーティン・エデン

©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE

【出演】ルカ・マリネッリ、ジェシカ・クレッシー、デニーズ・サルディスコ、ヴィンチェンツォ・ネモラート、カルロ・チェッキ
【監督・脚本】ピエトロ・マルチェッロ

運命的な出会いと階級格差の挫折で生まれる思想

 イタリア・ナポリの港湾地区で生まれ育ったマーティン・エデンは、船乗りをしている。本をこよなく愛し、将来は文筆で立ちたいと夢を抱いていた。姉の家に寄宿しているが、義兄からは生活費を負担しないことで嫌味を言われる。正義感に駆られてのことだが、喧嘩っ早いことが玉に瑕で、生傷は絶える事がなかった。

 ある日、チンピラに絡まれている青年を助けたことをきっかけに、上流階級の令嬢エレナと運命的な出会いをする。

 エレナの美しさに惹かれるとともに、彼女の文学的な素養はマーティンに多大な影響を与える。その時、基本的な教育すら受けていない、自らの圧倒的な無教養さを気づかされる。

 文学への関心は作家を志す希望へと膨らみ、独学で勉学に励み、詩作を重ね、短編小説を編み、出版社への投稿を繰り返すようになる。

 『マーティン・エデン』はアメリカの作家ジャック・ロンドンが1909年に発表した小説(日本では「ジャック・イーデン」白水社刊)を原作としている。20世紀初頭の時代背景とアメリカ西海岸を舞台にした自伝的小説だが、場所はイタリア・ナポリに変更されている。

 マーティンとエレナは互いに惹かれ合う関係だったが、階級の格差は埋め難い障害となり、ふたりの間には溝が生まれる。

 宿なしとなったマーティンに部屋を提供してくれる未亡人や盟友となるラスとの出会い。惜しみない援助をしてくれる姉の存在により、幾多の挫折を乗り越え、マーティンは作家としての名声を獲得する。

 労働者階級のマーティンが、貧困のない世界のために社会主義を否定しないことと、再会したエレナを拒絶する痛みが思想と精神の微妙なバランスのもとにあるというのが、皮肉ではあるが心に刺さる。ただ、時折り挿入されるイメージ映像が、何を意味するのか?今ひとつ掴み取れないことと、構成が荒っぽいのが少し気になる。

 ヴェネツィア映画祭で主演男優賞に輝いた、マーティン役のルカ・マリネッリは圧巻の好演で映画を支えている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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