岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

天才デザイナーに肉薄するドキュメンタリー

2020年10月12日

ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン

©House of Cardin - The Ebersole Hughes Company

【出演】ジャン=ポール・ゴルチエ、シャロン・ストーン、ナオミ・キャンベル、森英恵、高田賢三、桂由美、グオ・ペイ、アリス・クーパー、フィリップ・スタルク
【監督・プロデューサー】P.デビッド・エバーソール&トッド・ヒューズ

モードの民主化を実現した革命児のもう一つの夢

 ピエール・カルダンの名前を聞けば、多くの人はデザイナーと認識するだろう。初めての来日は1959(昭和34)年のことで、日本をファッション市場として注目した最初のデザイナーでもあり、その知名度は高い。また、高級ブランドのイメージを広く一般大衆に波及させた革命児でもある。

 ピエール・カルダンは1922年、イタリア・ベニスの近郊に生まれた。2歳の時、家族揃ってフランスに移住。39年、ヴィシーの仕立て屋で職業指導を受けたことが、業界に関わるきっかけとなった。45年、パリに移り"マダム・バカン"のアトリエに入り、ジャン・コクトーの映画『美女と野獣』の衣装、仮面などの造形を担当した。翌年には、クリスチャン・ディオールの立ち上げに参加。ファッションだけでなく、バレエ、演劇、映画と活躍の場を広げ、様々なアーティストとの交流で人脈を築き、50年には自らのアトリエを構えている。オートクチュール・コレクションを発表したのは53年で、その成長は順風満帆に見える。

 オートクチュールというのは、フランス語のオート=高級、高いの女性形の形容詞。チュールは仕立て服のことで、高級注文服のことを言う。

 カルダンはこの富裕層向けだったオートクチュールを「一般の人の服」に方向転換していく。59年にはプレタポルテ(=既成服)の市場に進出した。オートクチュールの水準に匹敵する既成服が百貨店プランタンに手頃な価格で並ぶ、庶民には夢のような時代の到来だった。これを"モードの民主化"と称し、カルダンは時の人となる。

 『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男~』は、97歳(現在は98歳)、今も現役で活躍するピエール・カルダンに密着、その生き方に迫ったドキュメンタリーである。

 男性モードへの進出、子供服専門のブティックの出店、日本人モデル松本弘子の起用と、初物づくめだが、それはファッション界に止まらない。自動車、家具などのライフスタイル全体のデザインに発展した。映画ではジャンヌ・モローとのパートナー関係のほか、コクトー、ヴィスコンティ、パゾリーニといった監督の実名が飛び交う。劇場を買収し、才能ある人材の発掘に貢献したのは、夢を掴んだ男のもう一つの夢の実現だろう。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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