岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

りんご農家を舞台にした夢と挫折の青春映画

2020年10月09日

実りゆく

©「実りゆく」製作委員会

【出演】竹内一希、田中要次、田中永真、橋本小雪、鉢嶺杏奈、島田秀平、小野真弓、三浦貴大、爆笑問題(特別出演)、山本學
【監督・脚本】八木順一朗

笑顔にしたい人がいる 一途な思いで進む夢への一歩

 小学生の実(みのる)は吃音をからかわれ、いじめにあっていた。そんな時、そばに寄添い慰めてくれる母がいた。

 それから10年、長野県のりんご農家の跡取りとして生まれた実(竹内一希)は、父親・松尾等(田中要次)の厳しい指導のもと、忙しく作業に追われていた。不器用な実には捨てられない夢があり、それが父親の期待に応えきれない要因でもあった。そして、早くに亡くなった母の不在が、父子の関係のしこりになっていた。

 近所の若手の農園主ヒデ(三浦貴大)にも煮え切らない態度を指摘されるし、地域の重鎮の宮下昭一(山本學)からは、近く開催される"りんご奉納祭"の主役を任され喝を入れられる。

 週末、実は父の冷たい視線を振り切るようにして、高速バスに揺られて東京へ向かうのだった。

 『実りゆく』の製作の過程は少し変わっている。「MI-CAN 未完成映画予告編映画大賞」という奇怪なコンクールがある。未だ存在しない映画の予告編で競うというもので、グランプリの受賞者に本編の映画製作の権利が与えられるというもの。映画製作の現場の多くは企画書から始まるのだから、それを予告編に置き換えただけで、映像の方が具体的な説得力があるのかもしれない。

 その第3回大会(2018年)に本作の監督である八木順一朗が出品したのが『実りゆく長野』で、その予告編でも、お笑いコンビ"まんじゅう大帝国"の竹内一希が主演を務めていた。作品はグランプリは逃したものの、"堤幸彦(企画主催者)賞"と"MI-CAN男優賞"をダブル受賞した。その後、主演、監督の再タッグにより本編の撮影が始まった。

 舞台となるのは、長野県下伊那郡松川町。美しい大自然、山並みに囲まれた静かな町にりんごの木の緑が広がり、実りゆく秋には赤く色づいた、たわわなりんごが風に揺れる。

 実は東京でお笑いライブの舞台に立つ。普段、伏目がちだった表情が一変、生き生きと弾け、トラウマになっている吃音もなくなる。

 笑顔にしたい人がいるという、一途な信念は挫折を乗り越え夢を掴もうとする。清々しい青春映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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