岐阜新聞 映画部

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1994年の韓国社会を、ウニの視点で瑞々しく捉えた傑作

2020年10月05日

はちどり

©2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.

【出演】パク・ジフ、キム・セビョク、イ・スンヨン、チョン・インギ
【監督・脚本】キム・ボラ

この映画の素晴らしさは、抑圧された女性の視点だけに立っていないところ

 世界経済フォーラムが公表した「ジェンダーギャップ指数2020」で、韓国は108位(ちなみに日本は121位)だった。欧米に比べると東アジアは男女平等が全然進んでいない。男性監督中心の韓国映画界であるが、最近は女性監督が台頭してきている。その中でも『はちどり』のキム・ボラ監督(38歳)は抜きん出た存在と言えよう。

 時はソウル五輪から6年後、金泳三文民政権が誕生した翌年の1994年。舞台はソウル江南の宅地開発地区で、今やセレブの街になっているテチ洞。儒教文化が根付き、家父長制が当たり前だったあの時代、本作の主人公ウニ(パク・ジフ)は、肉体と精神が急激に変化していく大人と子供の境目の世代、14歳の中学2年生だ。

 小さな餅屋を営む両親は、いい大学を目指している兄ばかりを大切にする。権威主義の先生が巾を利かす学校にはちっとも馴染めず、彼女は不良のレッテルを貼られる。韓国が近代国家の仲間入りを果たそうとしているのに、女性の地位は置いてけぼりだ。

 そんな中でも、ウニは少女時代をそれなりに楽しんでいる。学校外の友達とトランポリンで飛び跳ねたり、彼氏とデートしたり、クラブに遊びに行ったり、後輩の女子から姉御と慕われたり。

 そして唯一、ウニの話に耳を傾けてくれる漢文塾のヨンジ先生(キム・セビョク)から、「自分が知ってる人達の中で、本心が分かる人は何人いる?」と、大人の世界で生きていくヒントをもらえる。

 この映画の素晴らしさは、抑圧された女性の視点だけに立っていないところだ。兄は男らしさの追及や受験戦争での勝ち残りを強要され、泣くこともままならず、ストレスから妹に暴力をふるう。男尊女卑の弊害は、男にも苦しみを与えていると描いているのだ。

 ソンス大橋の崩落や金日成の死去など時代背景を巧みに取り入れて物語に絡ませる。あの時代の韓国社会を、ウニの視点で瑞々しく捉えた傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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