岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

世界遺産シントラにやって来る訳あり家族の物語

2020年09月27日

ポルトガル、夏の終わり

© 2018 SBS PRODUCTIONS / O SOM E A FÚRIA © 2018 Photo Guy Ferrandis / SBS Productions

【出演】イザベル・ユペール、ブレンダン・グリーソン、マリサ・トメイ、ジェレミー・レニエ、パスカル・グレゴリー、ヴィネット・ロビンソン、アリヨン・バカレ、グレッグ・キニア
【監督・脚本】アイラ・サックス

複雑な登場人物たちの関係よりも 心情を読み解く方がわかりやすい

 ヨーロッパ映画では、夏のひととき、避暑地などに集う人々の人間模様を描いたものがよくある。特別な場所で特別な人たちが集う。開放的で陽気な空気感と、夏の名残りの一抹の淋しさ。そういう雰囲気は物語の舞台設定上の効果となる。

 『ポルトガル、夏の終わり』は女優のフランキー(イザベル・ユペール)が自らの避暑地の別荘に、ゆかりの人々を集めてはじまる物語である。

 舞台となる地は、ポルトガル西部のシントラで、ユーラシア大陸の最西端に位置する。首都リスボンから電車で40分ほどの距離にあり、シントラ宮殿やペーナ宮殿、ムーアの城跡など、中世の名残りの建造物が数多くあり、町全体が世界遺産に指定されている。

 夫のジミー(ブレンダン・グリーソン)は、我儘で自分勝手なフランキーの行動を父性のような愛情で優しく包み込む。いちばんの心配はひとり息子ポール(ジェレミー・レニエ)のことで、家族の集合の目的には彼に対する策略があった。他にも、元夫や訳ありの顔ぶれが並ぶのだが、フランキーが心待ちにしているのは、アメリカに住むスタッフのひとりであり、大親友でもあるアイリーン(マリサ・トメイ)だった。しかし、その到着は遅れていた。

 イザベル・ユペールは、自らを投射したような大女優の役柄を、彼女の持ち味とも言える謎めいた雰囲気と、時折見せる気ままな可愛らしさを使い分け、巧みに演じている。

 極彩色の壁や屋根が華やかに見える街並み。迷路のような道に続く森は、静寂に包まれた別世界となる。フランキーの目的は家族の幸せを願うという母性のようなものだったが、彼女が画策した唐突とも思える物語の結末には、悲しい別れが待ち受けている。

 アイラ・サックス監督は、家族や結婚を題材にした人間ドラマを多く手がけ続けており、今作でもその信念が揺らぐことはない。シントラの町の風景の切り取り方はアメリカ出身という異邦人の視点だろうか?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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