岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品パブリック 図書館の奇跡 B! 弱者の声を聞く図書館で起きる社会派ドラマ 2020年09月18日 パブリック 図書館の奇跡 © EL CAMINO LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 【出演】アレック・ボールドウィン、テイラー・シリング、クリスチャン・スレイター、ジェフリー・ライト、ジェナ・マローン、マイケル・K・ウィリアムズ、チェ“ライムフェスト”スミス 【製作・脚本・監督・主演】エミリオ・エステベス 行動する勇気と真実を見極める大切さを教えてくれる 昨年7月、CINEXでも公開された『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(フレデリック・ワイズマン監督)は、図書館が「ここまでするか⁉︎」という、驚きの実情を克明に見つめたドキュメンタリーだった。 『パブリック 図書館の奇跡』の舞台となるのは、オハイオ州シンシナティ。コロンバス、クリーブランドに次ぐ州内第3の都市で、人口は30万程。日本でいうと中核都市のイメージだが、街の歴史は古く、かつてはオハイオ川の河港都市として発展し、全米でも6番目の人口を要した。しかし、50年代の50万人をピークに減少傾向に転じている。MLBのレッズ、NFLのベンガルズの本拠地であり、全米でも最古の交響楽団の音楽堂があるなど、歴史的な建物も多く点在し、文化都市という位置づけを可能にしている。 シンシナティ公共図書館員のスチュアート(エミリオ・エステベス)のいつもの仕事風景。少し気がかりなのは、近頃の寒波により、路上生活者が凍死する事案が発生していること。図書館の常連利用者にはホームレスがいて、スチュアートとの打ち解けたやり取りから、図書館の立ち位置とその人柄と関係性が推察できる。 ところが、そのホームレスのひとりに図書館は訴えられる。それは、体臭を理由に退館を強要したというもので、次期市長選に出馬予定である市の検察官デイヴィス(クリスチャン・スレーター)は、穏便な示談を画策し、その責任を現場の責任者であったスチュアートに取らせようとする。 次の日、閉館時間が近づく図書館で騒動が起こり、それは一大事に発展する。 ホームレスによる「凍えるものに屋根を!」で始まった、図書館からの退出拒否の集団行動は、警察の出動や出しゃばってくる検察官、マスコミによって、都合よく解釈をねじ曲げられ、不法占拠、人質立てこもり事件にすり替えられていく。 物語にはいくつもの切り口があり、個性あふれる登場人物を配置のもと、巧みな構成で見事な社会派作品に仕上げている。脚本、監督を兼ねるエミリオ・エステベスの豊かな才能が光る。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (5)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年11月29日 / 私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰? 権力と闘う信念の女性の生き様で描く政治映画 2023年11月28日 / 私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰? モーリーンさんと権力側との闘いを描いた実話の社会派映画 2023年11月27日 / 燃えよドラゴン 劇場公開版4Kリマスター 私が人生の座右の銘にしている映画、『燃えよドラゴン』 more 2018年05月30日 / 名古屋シネマテーク(愛知県) 作り手も観客も映画と真剣に向き合える映画館 2020年01月22日 / キネカ大森(東京都) ミニシアターから名画座まで…いくつもの顔を持つ街の映画館 2022年08月24日 / 元町映画館(兵庫県) 淀川長治が育った映画の街に再び映画の灯が甦った。 more
行動する勇気と真実を見極める大切さを教えてくれる
昨年7月、CINEXでも公開された『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(フレデリック・ワイズマン監督)は、図書館が「ここまでするか⁉︎」という、驚きの実情を克明に見つめたドキュメンタリーだった。
『パブリック 図書館の奇跡』の舞台となるのは、オハイオ州シンシナティ。コロンバス、クリーブランドに次ぐ州内第3の都市で、人口は30万程。日本でいうと中核都市のイメージだが、街の歴史は古く、かつてはオハイオ川の河港都市として発展し、全米でも6番目の人口を要した。しかし、50年代の50万人をピークに減少傾向に転じている。MLBのレッズ、NFLのベンガルズの本拠地であり、全米でも最古の交響楽団の音楽堂があるなど、歴史的な建物も多く点在し、文化都市という位置づけを可能にしている。
シンシナティ公共図書館員のスチュアート(エミリオ・エステベス)のいつもの仕事風景。少し気がかりなのは、近頃の寒波により、路上生活者が凍死する事案が発生していること。図書館の常連利用者にはホームレスがいて、スチュアートとの打ち解けたやり取りから、図書館の立ち位置とその人柄と関係性が推察できる。
ところが、そのホームレスのひとりに図書館は訴えられる。それは、体臭を理由に退館を強要したというもので、次期市長選に出馬予定である市の検察官デイヴィス(クリスチャン・スレーター)は、穏便な示談を画策し、その責任を現場の責任者であったスチュアートに取らせようとする。
次の日、閉館時間が近づく図書館で騒動が起こり、それは一大事に発展する。
ホームレスによる「凍えるものに屋根を!」で始まった、図書館からの退出拒否の集団行動は、警察の出動や出しゃばってくる検察官、マスコミによって、都合よく解釈をねじ曲げられ、不法占拠、人質立てこもり事件にすり替えられていく。
物語にはいくつもの切り口があり、個性あふれる登場人物を配置のもと、巧みな構成で見事な社会派作品に仕上げている。脚本、監督を兼ねるエミリオ・エステベスの豊かな才能が光る。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。