岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

家庭一筋主婦63歳が体験する新世界

2020年09月07日

ブリット=マリーの幸せなひとりだち

© AB Svensk Filmindustri, All rights reserved

【出演】ペルニラ・アウグスト、ペーター・ハーバー、アンデシュ・モッスリング、マーリン・レヴァノン
【監督】ツヴァ・ノヴォトニー

名優ペルニラ・アウグストの存在感がブリット=マリーがそこにいることを教えてくれる

 スウェーデンの都市に住むブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)は63歳。結婚して40年、仕事一筋の夫を内助の功で支え、完璧に家事をこなしていると自負している。しかし、夫婦の間には共通の話題もなく、たまに交わされる会話といえば、業務連絡のような有様。気がつけばブリット=マリーは仏頂面になっていた。

 ある日、夫の急病の報が入る。それでも慌てず取り乱すことなく、病院へ出向いた彼女が目にしたのは、信じてきた夫の不貞の証だった。

 ブリット=マリーの決断は早く、キャリーケースひとつに身のまわり品をまとめて家を出る。職に就くために公共の職業紹介所に行ってはみたものの、就業経験は結婚以前の短期間のみで、40年の主婦業は就職のための手助けにはならない。

 スウェーデンは日本の1.2倍ほどの国土に、1,000万少しの人口しかない。高齢化が進み人口減少に転じている日本と違い、人口は増加傾向にあるのだが、それが高齢者に有利な事情にはたらくわけでもなく、63歳の専業主婦に就職口は見つからない。それでも親切な担当者は、とっておきの求人先を捜し出してくれる。

 バスに揺られてたどり着いたのは田舎の小さな町で、そこにあるユースセンターの管理人というのが、やっと見つけた働き口だった。

 『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』は、『幸せなひとりぼっち』(15/日本公開16年)の原作者フレデリック・バックマンの小説「ブリット=マリーはここにいた」の映画化である。妻に先立たれ、職も無くした59歳の男と家出主婦の再生の物語。ひとりになった事情に違いがあるものの、いくつかの共通点もある。

 管理人には弱小の子どもサッカーチームのコーチという兼業のおまけがついていた。マリーのサッカー体験は、夫がテレビ観戦中に見せる喜怒哀楽を眺めていたことだけだった。

 不幸を象徴するようなブリット=マリーの仏頂面が次第に笑顔に変わる。家の中に閉じこもっていては見えなかったものが見えてくる。この奮闘記には愛が溢れている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る