岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

歪な母子愛の転落の道行

2020年09月04日

MOTHER マザー

©2020「MOTHER」製作委員会

【出演】長澤まさみ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、土村芳、荒巻全紀、大西信満、木野花、阿部サダヲ
【監督】大森立嗣

人間味が希薄では愛の発露も届かない

 気まずい沈黙が支配する家族の場。両親と妹を前に、執拗に金の無心をする秋子(長澤まさみ)がいる。唖然を通り越して怒りが空気を重くしている。

 ゲームセンターでひとりウキ気味に目立っていた男・遼(阿部サダヲ)と意気投合した秋子は、幼子の周平を残したまま、ホストをする遼の職場がある名古屋へついて行ってしまう。

 下心と色仕掛けで、世話を焼いてくれる役人(皆川猿時)に託したつもりだったが、他人の子どもは厄介者でしかなく、周平はひとりで秋子の帰りを待つことになる。

 自らのネグレストには目を背け、秋子の悪知恵は、約束の反故を材料に恐喝に発展する。しかし、それは傷害事件を起こすことになり、逃亡生活に追いやられることになってしまう。そして、多分、再び、男(遼)には棄てられる(逃げられる)。

 宿代わりのラブホテルでは、経営者の若旦那(仲野太賀)に言い寄るが、部屋からは追いやられ、敷地の片隅に張られたテント暮らしへと落ちてしまう。秋子はその時、遼の子を宿していた。

 5年後、17歳になった周平(奥平大兼)の隣には、遼の子・冬華がいた。秋子の生き方は変わるはずもなく、負担は周平にのしかかり、犯罪まがいの行為にまで加担を強いられるようになる。ホームレスのような生活から救ってくれたのは保護司の亜矢(夏帆)だった。簡易宿泊所に住めるようになり、学校に行ったこともなかった周平は、学ぶ喜びを知るのだが…。

 秋子は都合のいい時は母性をむき出しにする。「私が産んだ子、舐めるように育ててきた」。はたしてそれは愛情と呼べるか?

 周平はそんな母親にも従順だが、「ここに居たい」「学校に行きたい」と主張するようになる。映画は少年による祖父母殺害事件にインスピレーションを得て創作された物語である。母親像は人物造形として、掴みどころがない。それが個性だと言ってしまえばそれまでだが、行動ばかりが先走りして人間味は希薄と言わざるを得ない。だからこそ、一度は反発を見せた周平が「お母さんが好きだから」という感情の発露が届いてこない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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