岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

救いのない映画だが紛れもない傑作

2020年09月04日

MOTHER マザー

©2020「MOTHER」製作委員会

【出演】長澤まさみ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、土村芳、荒巻全紀、大西信満、木野花、阿部サダヲ
【監督】大森立嗣

大森監督は親の責任放棄の問題には高い関心があるのだろう

 大森立嗣監督の『MOTHER マザー』は、『あゝ、荒野』、『愛しのアイリーン』、『新聞記者』等の傑作を連打するスターサンズの製作である。

 大森監督は、昨年『タロウのバカ』という映画で、戸籍の届けがされていない(なので学校にも行っていない)少年を描いているので、親の子への責任放棄の問題には高い関心があるのだろう。

 離婚をして働くこともせず、金にルーズで両親や妹から借りた金もパチンコに使ってしまい縁まで切られ、子どもを学校にも行かせず、暮らしの為に金を盗ませ、挙句の果てには殺人まで命じる毒母と、彼女にどこまでも付いていく息子。母親を愛しているがため、何を命じられても母親を捨てられない息子が哀れでいたたまれない。

 誰からも共感を得られないこの母親を演じる長澤まさみと、17歳になった息子を演じる奥平大兼(新人)が素晴らしい。

 子を自分の手元に縛り付けて意のままに扱う母親と、そんな母親を自分しか救えないと思い彼女に従う息子の共依存をドライに描いた、救いはないが紛れもない傑作である。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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