岐阜新聞 映画部

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丁々発止のバトルが繰り広げられる、抱腹絶倒のワンシチュエーションコメディ

2020年08月07日

お名前はアドルフ?

© 2018 Constantin Film Produktion GmbH

【出演】フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、クリストフ=マリア・ヘルプスト、ユストゥス・フォン・ドホナーニ、カロリーネ・ペータース ほか
【監督】ゼーンケ・ヴォルトマン

クスクス笑うのが基本なので、飛沫は飛びにくい

 本作は、ドイツのライン川ほとりに佇む優雅な一軒家で始まった楽しいディナーが、「赤ん坊の名前はアドルフにする」との発言から一転、あらん限りの言葉を使って丁々発止のバトルが繰り広げられる、抱腹絶倒のワンシチュエーションコメディだ。

 誤配送の宅配ピザの兄ちゃんに上から目線の悪態をつく大学教授シュテファン。彼の妻で「多様性の尊重」がモットーの国語教師エリザベト。彼女の弟で、学業はイマイチだったけど不動産業で大成功しているトーマス。彼の恋人で舞台女優を目指している妊娠中のアンナ。みんなの幼馴染でオーケストラのクラリネット奏者レネ。上映時間91分の濃密に練りこまれた物語は、この5人のくせ者たちによって進んでいく。

 誰も子どもに名付けようとはしない「アドルフ」という名前。学歴の高いインテリたちは考えさえしなかったが、高卒のトーマスが突然「アドルフ」にすると会話に放り込んでくる。当然と思われていたタブーについて、どう説明していかに相手を説得するか、ディベートの始まりである。

 現代ドイツ文学が専門のシュテファンは、学歴がないものの戯言だろうとバカにしていたが、頑固なトーマスはちっとも引き下がらない。トランプ政権を生み出した、民主党支持層のインテリVS共和党支持層の白人労働者のドイツ版みたいだ。

 議論がエスカレートしてくると、冷静な議論から次第に感情的言い争いへと転化していく。引くに引けなくなってきて、今まで黙っていたことや気にも留めなかった嫌いな部分がつい口に出てしまうようになる。

 あげくは人格否定から秘密の暴露まで、本当のタブーが白日の下にさらされてしまう。人間の愚かさ醜さがあぶり出され、コミュニティーの崩壊を招きかねない事態となってくる。

 議論の末にある話のオチは秀逸!近年これほど言葉で笑わせてくれた映画はない。

 なお、この映画の笑いはクスクスが基本なので、飛沫は飛びにくい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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