岐阜新聞 映画部

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奴隷解放運動家となったハリエットの半生を描いた、生真面目な歴史教科書的映画

2020年08月03日

ハリエット

©2019 Focus Features LLC.

【出演】シンシア・エリヴォ、レスリー・オドム・Jr 、ジャネール・モネイ
【監督】ケイシー・ レモンズ

知らなかった史実が分かっただけでも価値がある

 コロンブスの西インド諸島到達(1492年)以来、ヨーロッパ各国は、先住民族から土地を奪い南北アメリカを植民地化していった。その中で、北アメリカでは宗教的迫害を逃れてイギリスから渡ってきたピューリタン(清教徒)を中心に独立志向が高まり、1776年に独立宣言。それ以来、アメリカは個人の「自由」と神の前の「平等」を国是としている。

 しかし、これはあくまでも征服した白人側の自由と平等であり、先住民族やアフリカ大陸から連れてこられた黒人には、自由も平等もないどころか、人間扱いされてこなかった歴史がある。

 本作は、黒人奴隷の両親から生まれ女性で奴隷解放運動家となったハリエット・タブマン(1820-1913)の半生を描いた、生真面目な歴史教科書的映画だ。

 南北戦争(1861-1865)前のメリーランド州ブローダス農場。奴隷のミンティ=のちのハリエット(シンシア・エリヴォ)は、自由黒人のジョンと結婚するも、農場主から「お前は永遠に奴隷だ」と自由になる約束を反故にされる。

 怒りに震えたミンティは、奴隷制が廃止された隣接するペンシルベニア州フィレデルフィアを目指して脱走、黒人が南部から北部へ脱出するのを手助けする「地下鉄道」の運動に加わる。

 農場主から追われながら、かろうじて逃げおおせるまでのサスペンス。命がけでメリーランド州へ舞い戻り、家族を含めた黒人たちを決死の行動で救い出す、手に汗握るシーン。それなりにドキドキさせる。

 シンシア・エリヴォは、タフで強靭な精神であったハリエットを演じきっており、彼女が歌う主題歌「スタンド・アップ」も素晴らしい。

 しかし、実話と銘打ちながら、いちいち神のお告げで逃げる方向を決めるだの、神がかった幸運の持ち主だの、スピリチュアルが過ぎるのはいただけない。安っぽくなってしまう。

 若干の不満はあるが、知らなかった史実が分かっただけでも価値がある映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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