岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

作家の最期の日々を描いた悔恨の挽歌

2020年07月18日

シェイクスピアの庭

© 2018 TKBC Limited. All Rights Reserved.

【出演】ケネス・ブラナー、ジュディ・デンチ、イアン・マッケラン、キャスリン・ワイルダー、リディア・ウィルソン
【監督】ケネス・ブラナー

稀代のシェイクスピア役者たちによる真実の物語

 ウィリアム・シェイクスピアほど有名な劇作家はいないだろう。その作品は400年を経た今でも、世界の何処かで上演されている。しかし、彼には謎と呼べる部分も多く存在する。その名がロンドンを中心とした表舞台に知れ渡るようになった1583年から、20年間に残した作品は、戯曲にとどまることなく、詩=ソネットなどでも優れた作品を残している。様々な場や人物を描き、その作風も多彩なことから、とてもひとりの人物によって書かれたものではなく、シェイクスピアは複数の人物による美術工房のようなものだったのではないか?という説まである。

 監督のケネス・ブラナーは1960年、北アイルランド・ベルファストに生まれた。王立演劇学校を主席で卒業後、23歳の時にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに入団し、多くの舞台に立ち、80年代の後半からは映画にも進出した。シェイクスピアの書いた人物を演じ、演出も手がけている。そして『シェイクスピアの庭』では、シェイクスピア本人を演じている。

 謎の多いシェイクスピアではあるが、その出自は確かで、1564年4月26日、ジョンとメアリの長男として生まれたと、受洗の記録が教会に残されている(誕生日は4月23日)。1582年11月27日、18歳の時、8歳年上のアン・ハサウェイと結婚。この時、アンは妊娠3ヶ月であった。

 1613年6月29日、「ヘンリー八世」上演中、グローブ座は火災により焼失する。まもなく断筆したシェイクスピアは、故郷ストラットフォード・アポン・エイヴォンへ戻る。『シェイクスピアの庭』は、20余年にわたり、家族を顧みることのなかった劇作家の死までの最晩年を描いている。家族や故郷の人々の反応は酷く冷たいものに見える。獲得した名誉や名声は何だったのか?彼の眼前には早逝した長男のハムネットの幻影が現れる。家族との雑事は日常への回帰を誘う。悔恨の先に見える安らぎにすがる、作家の姿が心にしみる佳作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る