岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

資本主義を俯瞰するドキュメンタリー

2020年07月10日

21世紀の資本

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【出演】トマ・ピケティ、ジョセフ・E・スティグリッツ ほか
【監督】ジャスティン・ペンバートン

格差社会が生み出す悪循環に立ち向かう術はあるのか

 このドキュメンタリーには原作がある。意外に思われるかも知れないが、小説のような物語を基にするものではない。「21世紀の資本」はフランス人経済学者トマ・ピケティの著書である。この本は経済書としては異例ともいえる世界的なベストセラーとなり、日本語版も13万部を売り上げるヒット作となっている。

 そもそも経済学とはなんぞや?という疑問を個人的には持っている。ノーベル賞に経済学賞があることすら疑問に感じている。経済を哲学や思想に絡めて語ることで、あるべき予測の学問ではなく、過去を振り返る検証に過ぎないものにしているように思えてならない。

 まあ、そういう素人考えは虚しい戯言と無視していただいて構わない。映画『21世紀の資本』はすこぶる面白いのだから。

 「世の中が成熟すると資本主義は平等になる」と言ったのはアメリカの経済学者サイモン・グズネッツで、これは統計学によるデータの蓄積によっており、私の素人考えである、経済学の哲学的思想的側面を否定している。グズネッツは経済学に統計学を反映させた功績により、1971年にノーベル経済学賞を受賞している。

 映画は過去300年の歴史について語りはじめる。人類が体験した幾つかの戦争を含めた厄災とそれに付随する資本主義の発展の過程を見せる。産業革命の過程をフィルム=映画によって語る手法は分かりやすく面白い。勿論、これは歴史の俯瞰に他ならない。

 1%の富裕層が世界の土地の70%を独占する現状は、格差社会として現代が抱える社会問題となっている。それは歴史的に見れば、第一次世界大戦前の不平等社会と似ているという。

 映像はより身近な顔を映し出す。ヒトラーからレーガン、サッチャーに移行するかたちはダイナミックで説得力があるが、これは経済が政治家たちの言いなりになってきたことの証でもある。世の中に渦巻いている格差社会への不満は政治不信となり、富と権力に立ち向かう。富の分配などあり得ないという結末が見えるのが怖い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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