岐阜新聞 映画部

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面白すぎて満腹の映画

2020年07月21日

弥生、三月 -君を愛した30年-

©2020「弥生、三月」製作委員会

【出演】波瑠、成田凌、杉咲花、岡田健史、小澤征悦/黒木瞳
【脚本・監督】遊川和彦

コクを味わう前に次のシーンに飛んでいく

 「策士策に溺れる」(策士はとかく自分の策に頼りすぎてかえって自滅する)

 テレビではヒット作を連発している遊川和彦氏が、自信の成功体験を映画でも踏襲し、ものの見事に失敗したのが本作である。

 内容はぺらっぺらでティッシュペーパーよりも薄く、主人公の山田太郎(成田凌)と弥生(波瑠)の行動は一貫性に乏しくてキャラクター性崩壊。得意げに挿入される3月の日付のギミックもこれ見よがしでわざとらしい。

 上映時間110分を31日で割ると1日4分弱。カップうどんの戻しの時間(5分)より短かく、コクを味わう前に次のシーンに飛んでいく。時系列はいったりきたりで、日付が1日ごとに立っていく仕掛けの意味が分からない。ていうか、途中からは恋愛そっちのけ、どうやって日付を表示するかだけに興味が移ってしまう。これ私だけ?

 二人の昭和テイストのすれ違いドラマの発端は、サクラ(杉咲花)が薬害エイズで死んでしまうということ。泣かせの道具としてだけの扱いは、エイズ被害者の感情逆なでである。また、3月という設定は東日本大震災が出てくる魂胆が見え見え。被災者に対する思いなど1mmも感じない。

 高田馬場という地名だけを手掛かりに弥生を探しにきた太郎が、偶然訪ねた古書店で、本を抜き出した棚の向こうにいる弥生とバッチリ目が合うシーン。本棚には背板があるので見えるわけないでしょ! 

 サクラが好きだった曲が坂本九の「見上げてごらん夜の星を」。高田馬場では普通にBGMとして流れているのか?

 なんといってもおかしいのはサクラのお墓。思い出の分かれ道にポツンと1つだけある。なのあり得ん!でもって太郎や弥生が、それぞれ隠れて相手をこっそり見ている。あの~ほとんど見えてますけど。

 だいたいタイトルが「君を愛した30年」なのに、物語は高校1年の1986年から2020年迄の話。35年じゃん!

 はい、面白すぎて満腹の映画です。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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