岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

21世紀の新機軸の若草物語

2020年07月22日

ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語

【出演】シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ
【監督・脚本】グレタ・ガーウィグ

長編処女作を出版する製版シーンに、監督の情熱と思いを重ねている

 監督・脚色のグレタ・ガーウィグはこれまでインディペンデント系の個人的かつ自伝的な作風と思っていたが、本作では著名な原作のある素材の映画化で独自のカラーも打ち出すという一種の革新的創造を生み出し、期待以上の出来映え。四姉妹の個性は過去の映画化や原作どおりだが、監督は次女のジョー役であるシアーシャ・ローナンに思いを投影している。この四姉妹のセリフ回しが極めて現代的で、会話の内容こそ時代から離れてないものの、21世紀のかしましい姉妹のやり取りだ。

 もう一つ感心したのは、回想シーンへの転換と編集による繋ぎである。後半、次女が病弱の四女を海辺の療養に連れて行くという場面になった時、以前に家族で訪れた海辺のシーンとなる。また、向かいのローレンス家の長男と姉妹が秘密のやり取りをする郵便箱の鍵の場面となった時も、なぜその鍵が作られたかというシーンが回想される。こうした脚色の巧みさによりストーリーの面白さが傑出し、これまでのガーウィグ作品には見られなかったテクニックを見せつけている。

 エリザベス・テイラーがエイミーを演じたマービン・ルロイ版(1949年)、キャサリン・ヘプバーンがジョーを演じたジョージ・キューカー版(1933年)も観ているが、それらに引けを取らない新バージョンの誕生だ。

 ジョーは何度も作家になる夢を断念する。あきらめずに長編処女作を出版する運びとなる製版シーンに、この監督は自身の映画作りの情熱と思いを重ねているに違いない。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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