岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

優しさとは何かを問いかける人情話

2020年06月27日

太陽の家

©2019映画「太陽の家」製作委員会

【出演】長渕剛/飯島直子、山口まゆ、潤浩/柄本明、上田晋也(友情出演)/瑛太、広末涼子
【監督】権野元

内向的な少年を支える不器用な男の心意気

新築の家の建前式。若い施主夫婦が建物の設計変更を願い出る。棟梁の川崎信吾(長渕剛)は、きっぱりとそれを断り、その場から立ち去る。理不尽な申し出を拒絶するという、当たり前の反応だとも思うが…職人気質の頑固さを強調するオープニング。

 信吾は興味深げに建築現場を見る池田芽衣(広末涼子)に接近する。共に働く弟子たちの反応を見れば、よくあることだと感じ取れるが、コーヒーをご馳走になる事を口実に部屋に上がり込む図々しさや、それを上回る芽衣の魂胆…保険の外交員としての下心で、まんまと契約書にサインさせてしまうという話の落ちは、かなり強引な導入で戸惑いを感じる。それに加えて、人見知りで内向的な息子の龍生(潤浩)を信吾に託してしまい、その後の展開で、学校から不審者の通報を受け警察沙汰になるエピソードまであるのは、それに輪をかけているように思える。

 お話の骨格は人情話の趣きで、あの名作『無法松の一生』を彷彿させるのだが…。

 緊急手術のため入院を余儀なくされる芽衣は、龍生を信吾に預ける決断をするが、仕事のためという嘘をつかなければならなかった。信吾はそれには深入りすることなく、快く龍生を預かる。

 信吾の妻・美沙希(飯島直子)は肝っ玉母さん気質で、信吾のやる事にはとやかく口を挟むことはしない。ただ、筋を通せと釘を差す事は忘れない。高校生の娘・柑奈(山口まゆ)は、突然、家族の食卓に座る龍生に違和感をあらわに、信吾に激しく反発する。

 ギクシャクしてしまった家族の関係から、川崎家の内情と、信吾の心情が明らかになる。家を離れて独立した高史(瑛太)、そして柑奈も、信吾夫婦とは血のつながりのない子であることが分かってくる。

 不器用な男のお話だからか、はにかみが見え隠れする信吾は、チャーミングにすら見える。故に、家族の再生に取り組む過程は、少しウェット過ぎてバランスが取れていないのが残念だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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