岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 B! 蘇る伝説の討論会 2020年06月26日 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 ©SHINCHOSHA ©2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会 【出演】三島由紀夫、芥正彦、木村修、橋爪大三郎、篠原裕、宮澤章友、原昭弘、椎根和、清水寛、小川邦雄、平野啓一郎、内田樹、小熊英二、瀬戸内寂聴 【監督】豊島圭介 総括なき時代の分析 完結した人しない人 昭和45年11月25日。学校から帰宅すると、祖母が「作家が切腹した」と唐突に呟いた。その不可思議な非日常のような言葉は耳を素通りした。作家の名は三島由紀夫。彼の小説に接することになるのは、まだずっと先のことになるが、三島由紀夫を認識した日は今も記憶に残る。 昭和44年1月18日。東大の本郷キャンパスにある安田講堂では、学生と警察の睨み合いが続いていた。バリケードによって要塞化した講堂内には、全共闘および新左翼系の学生が立てこもっていた。警察力による排除の動きは、大学側の正式な要請によって16日に始まった。ヘルメット姿の学生による投石、燃えあがる火炎瓶、機動隊の放水、催涙弾の煙り、テレビに映るその映像は延々と続いたように感じたが、翌19日には封鎖解除された。 同年5月13日。なおも学生運動の火は依然として燃え続け、キナ臭い雰囲気の立ち込める中、東大駒場キャンパスの900番教室には1000人を超える学生で埋め尽くされていた。そこに単身乗り込むのは三島由紀夫。思想的には真反対を向いている学生たちのホームグランドに、警察が申し出た警護も断り、作家は乗り込んでいく。『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』は、そこで繰り広げられた伝説の討論会を13人の証言者の分析を交えて蘇らせたドキュメンタリーである。 煙草でモヤがかった場内。壇上に立った三島由紀夫は、笑みすら浮かべた穏やかな表情で語りだす。事前に想定された喧嘩越しはプロパガンダかも知れない。相対する学生側の論者にしても、既にひとつの諦念が見える。 証言者は言う「日本で言葉に力のあった時代」の討論だと…その言葉を今を生きる人たちがどれくらい理解できるだろうか? 学生側の論客としては芥正彦が際立つ。幼子を抱き、言葉を荒げ罵倒する。対峙したふたりはともにポーズする役者に見える。しかし、ひとりは完結し、もうひとりは今もそこにある。 あの時代が何だったのか?という問いかけに口籠る当事者たちの姿が生々しく映る。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (12)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年06月06日 / せかいのおきく 阪本順治監督の代表作のひとつとなる秀作 2023年06月06日 / せかいのおきく 幕末を舞台に健気な生業を見つめた青春時代劇 2023年06月06日 / せかいのおきく 小説の連作短編集みたいな味わいの映画だ more 2017年12月13日 / 十日町シネマパラダイス(新潟県) 震災を乗り越えて街に再び映画の灯を取り戻す 2020年03月18日 / 布施ラインシネマ(大阪府) 大阪の下町で地元の人たちに愛されてきた映画館 2023年05月31日 / 【思い出の映画館】七ぶらシネマ通り(静岡県) 静岡市内にあった明治時代から続く映画館通り。 more
総括なき時代の分析 完結した人しない人
昭和45年11月25日。学校から帰宅すると、祖母が「作家が切腹した」と唐突に呟いた。その不可思議な非日常のような言葉は耳を素通りした。作家の名は三島由紀夫。彼の小説に接することになるのは、まだずっと先のことになるが、三島由紀夫を認識した日は今も記憶に残る。
昭和44年1月18日。東大の本郷キャンパスにある安田講堂では、学生と警察の睨み合いが続いていた。バリケードによって要塞化した講堂内には、全共闘および新左翼系の学生が立てこもっていた。警察力による排除の動きは、大学側の正式な要請によって16日に始まった。ヘルメット姿の学生による投石、燃えあがる火炎瓶、機動隊の放水、催涙弾の煙り、テレビに映るその映像は延々と続いたように感じたが、翌19日には封鎖解除された。
同年5月13日。なおも学生運動の火は依然として燃え続け、キナ臭い雰囲気の立ち込める中、東大駒場キャンパスの900番教室には1000人を超える学生で埋め尽くされていた。そこに単身乗り込むのは三島由紀夫。思想的には真反対を向いている学生たちのホームグランドに、警察が申し出た警護も断り、作家は乗り込んでいく。『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』は、そこで繰り広げられた伝説の討論会を13人の証言者の分析を交えて蘇らせたドキュメンタリーである。
煙草でモヤがかった場内。壇上に立った三島由紀夫は、笑みすら浮かべた穏やかな表情で語りだす。事前に想定された喧嘩越しはプロパガンダかも知れない。相対する学生側の論者にしても、既にひとつの諦念が見える。
証言者は言う「日本で言葉に力のあった時代」の討論だと…その言葉を今を生きる人たちがどれくらい理解できるだろうか?
学生側の論客としては芥正彦が際立つ。幼子を抱き、言葉を荒げ罵倒する。対峙したふたりはともにポーズする役者に見える。しかし、ひとりは完結し、もうひとりは今もそこにある。
あの時代が何だったのか?という問いかけに口籠る当事者たちの姿が生々しく映る。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。