岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

大切なものを教えてくれるドキュメンタリー

2020年06月20日

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

©2018 FarmLore Films ,LLC

【出演】ジョン・チェスター、モリー・チェスター
【脚本・製作・監督】ジョン・チェスター

夢の農場は生命と自然が織りなす美しい場所となる

 ジョンとメリーはロサンゼルスに住む仲の良い夫婦。ある日、殺処分寸前だった犬を保護することになった。トッドと名付け精一杯の愛情を注いだが、飼主の気持ちを100%分かってくれるわけではない。トッドの鳴き声が原因となり、ふたりはアパートを追い出されてしまう。

 料理家のメリーはかねてから、体に良い食べ物を追求していた。その為には、自らの手で育てるのが近道かもしれない。それに賛同したジョンと共に郊外に移住することを決意する。

 暗中模索の末にふたりが辿り着いたのは、200エーカー(東京ドーム17個分)の農地だったが、そこは見渡す限りの荒地だった。

 『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』は、こうして一念発起、究極の農地作りを目指した夫婦の、8年間を追ったドキュメンタリーである。

 日本では戦後、1950年代に入ってから、天候不良や病害虫被害に左右されない合理的な農業のあり方が模索され、農薬や化学肥料を積極的に取り入れた農業が行われるようになった。それによって、除草などの手間を軽減すると共に、安定した収穫を得られるようになった。しかし、健康志向の高まりによる消費者目線の革新は、残留農薬の危険性を疑うようになった。

 無農薬、オーガニック=有機栽培という言葉が、食の文化の中で囁かれるようになったのは、1980年代の後半のことだった。

 スコップの切っ先の進入も許さない硬い地面、やっと掘り返せば、次に湧き出すのは大きな石ころたち。ジョンとメリーの闘いは始まる。

 硬い地面は水を吸って潤い、作物や樹木は芽吹き輝く。トッドの遊び場には、豚、牛、山羊、鶏、家鴨などの家畜が、そして、外からやって来る昆虫や野生の生き物たちで溢れる。

 監督も兼ねるジョン・チェスターは、テレビ番組などを手がける映像ディレクターで、自らの生活にカメラを向けながらも、生命の循環というかたちを見事な映像と巧みな編集で、人間と自然の共存を感じ取れる叙情詩にまで高めた。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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