岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

立ち位置は真反対でも、お互いリスペクト。これぞ議論である。

2020年06月26日

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

©2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

【出演】三島由紀夫、芥正彦、木村修、橋爪大三郎、篠原裕、宮澤章友、原昭弘、椎根和、清水寛、小川邦雄、平野啓一郎、内田樹、小熊英二、瀬戸内寂聴
【監督】豊島圭介

豊島監督は懐古趣味に陥ることなく、みんなで未来を考えていこうという映画に仕立て上げた

 村上春樹が「ノルウェイの森」で、村上龍が「69 sixty nine」で描き、タランティーノが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でオマージュを捧げた1969年。日本ではヒッピーやサイケが若者文化を彩ると共に、安田講堂攻防戦など学生運動が高まりを見せていた時代。あの頃の空気は、小5の私に「将来あんなお兄さんになりたい」と思わせるような正義とカッコよさがあった。

 本作は、噂に聞いていた「三島vs東大駒場全共闘」の当時の討論と、50年目の現在から見た関係者の証言で構成されている。1971年生まれの豊島圭介監督は、熱き時代の熱気や本質を懐古趣味に陥ることなく、バトンを渡された側としてみんなで未来を考えていこうよという映画に仕立て上げた。

 東大駒場の教室にびっしり集まった学生たち。相手は当代随一の人気作家・三島由紀夫(東大法卒)だ。何か起こるのではないか、と異様な緊張感と独特な高揚感が充満している。

 一人で乗り込んだ三島は、学生に対して丁寧に向き合いバカにしたような態度は一切見せない。詭弁を弄して屁理屈を言ってくる学生にも、やり込めようとせず相手の言うことを咀嚼し、きちんと答えていく。

 学生の方も、司会者が思わず「三島先生」と言ってしまい教室内が和むシーンをはじめ、三島をジェントルマンとして迎え入れている。水と油の思想なのだが、学生も三島も決してお互いを誹謗中傷しないし感情的な言い合いにはなっていかないのだ。

 討論の最後の方で三島は「天皇と諸君がひとこと言ってくれれば、私は喜んで諸君と手をつなぐ」と言う。当時の全共闘も三島も「反米愛国」では一致してしていたことがよく分かる。立ち位置は真反対でも、お互いリスペクトしていた。これぞ議論である。

 言い淀み、言い間違いを含め、本物であるからこその緊迫感があり、あたかも現場にいるような感覚になる。体感できる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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