岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

挫折した青年の再生の物語

2020年06月05日

いのちスケッチ

©2019「いのちスケッチ」製作委員会

【出演】佐藤寛太、藤本泉、芹澤興人、須藤蓮、林田麻里、前野朋哉、塩野瑛久、大原梓、今田美桜(友情出演)、風間トオル、高杢禎彦、浅田美代子、渡辺美佐子/武田鉄矢
【監督】瀬木直貴

動物園はいのちを感じさせてくれる場所になる

 田中亮太(佐藤寛太)は漫画家を目指し東京で頑張っていたが、仲間のデビューが決まったり、バイト先の夜逃げに合ったりと、精神的なダメージが重なり、ついに故郷へのUターンを決意する。福岡の大牟田に戻ってくるが、焼鳥屋を営む実家では父親から冷たくあしらわれ、旧友の部屋に転がり込むことになる。居候という身分に甘えていたが、その友人からアルバイトを紹介される。気軽な気持で面接に出向いたのは"延命動物園“だった。

 映画に登場する動物園は福岡県大牟田市に実在する市立動物園で、"動物福祉に特化した動物園”として注目を集めている。檻で囲い込む飼育を基本とする動物園にいる動物は幸せなのだろうか? この大きなテーマに挑戦している動物園では、動物たちが心身ともに健康に暮らせるように、環境に変化や刺激を与える“環境エンリッチメント”という方法を取り入れ、健康管理や治療、投薬などで、できるだけ動物に負担をかけない方法を模索する“ハズバンダリートレーニング“を実践している。例えば、麻酔なしで行う採血がそれで、ライオン、トラなどの肉食獣や、マンドリル、サバンナモンキーといった獰猛な霊長類などで、国内初の成功実績を達成している。

 園内を忙しく駆けずり回る園長の野田(武田鉄矢)をはじめ、同僚の飼育員には曲者が多く、全くの初心者の亮太は戸惑い面食らうことばかりだったが、獣医師の石井彩(藤本泉)は、住居が今は痴呆症のため施設に身を置く、祖母の和子(渡辺美佐子)のかつての家だった偶然も重なり、ふたりは接近することになる。

 動物園の運営は、市の予算削減で危機的な状況にあった。福祉動物園という取り組みを広く世間に伝えるため、彩は亮太の絵の力に可能性を見る。漫画家を断念し、絵から遠ざかっていた亮太だったが、再びペンを取る決意をする。

 『いのちのスケッチ』は動物の命の崇高さを見つめ、一度は挫折した若者の再出発と成長を真摯に描いた好編である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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