岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

なぜ彼女が未だに人々の記憶に鮮明に残り、その歌声に魅了されるのか

2020年06月07日

ジュディ 虹の彼方に

©Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

【出演】レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン、ダーシー・ショー、ロイス・ピアソン
【監督】ルパート・グールド

レネー・ゼルウィガーの圧巻の演技と圧倒的な歌唱力

 ジュディ・ガーランドは、AFIが1999年に発表した「映画スターベスト100」の女優部門で第8位に選ばれているが、キネマ旬報が2000年に発表した「20世紀の映画スター」外国女優部門ではベスト100にも選出されていない。日米の人気の差には驚くべきものがある。

 本作は、彼女が最期にスポットライトを浴びた1968年から69年冬のロンドン公演に焦点を当て、『オズの魔法使』で一躍スターになっていった舞台裏を描きつつ、なぜこれほどまでにアメリカで愛されたのかを綴る、魂の歌姫の映画である。

 映画の聖地ハリウッド、そこで作り出される作品は人々に"夢と希望"を与え、子どもたちには"知恵と心と勇気の大切さ”を教えてくれる。しかし、それを作り出していく裏側では"闇とカネ"が渦巻き、"薬とパワハラとマインドコントロール"で俳優やスタッフを支配していく。"夢と闇"、ジュディの心と身体が次第に蝕まれていったのは、こういう構造にあるのだと映画は描いていく。

 遅刻やドタキャン、すっぽかし、精神的に不安定で自殺未遂もたびたび、数度の結婚もうまくいかず、わがまま女優が代名詞。アカデミー主演女優賞の大本命だった『スタア誕生』では、日頃のスキャンダラスな行いが災いしてか受賞を逸してしまう。

 こんな彼女の死去後に生まれたルパート・グールド監督は、なぜ彼女が未だに人々の記憶に鮮明に残りその歌声に魅了されるのかを、的確な演出で解明し示してくれる。

 彼女のどんなに叩かれても干されても人気が低迷しても、何度も蘇っていく不屈の精神。世間体など気にせず、ゲイの人たちと分け隔てなく接していく心根の優しさ。この強さと優しさが愛され続ける理由なのだ。

 もちろんこの映画の成功は、ジュディを演じ皮肉にもアカデミー主演女優賞を受賞したレネー・ゼルウィガーの、圧巻の演技と圧倒的な歌唱力による歌声があるのは言うまでもない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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