上手い見せ方で旨さを演出する

孤独な少年が美味しいスイーツに出会う。

母親に育児放棄されたヤジッドは、辛い日常をやり過ごしていた。

ある日、里親の家の団欒の場で召されたスイーツに魅了されたヤジッドは、最高のスイーツをつくるパティシエになることを夢見るようになる。

物語はパティシエとして活躍を始めたヤジッドの回想として、この幼年期の紆余曲折、母親との関係性や、里親から受けた影響、周囲との確執が挿入され物語が進行する。

映画は22歳でパティスリーの世界チャンピオンに登り詰めたヤジッド・イシェムラエンの自伝を原作にした、実話ベースの成長物語である。

スイーツを語るのは邪道かも知れない。ケーキやクッキーといった代表的な一品を俎上にしたところで、国や地方によって、もっと極端なことを言えば、家それぞれに独自な流儀が存在する。

スイーツは甘くなければは、健康志向の甘さ控えめと、しばしば綱引き論争になり、昨今では "バエ" =見た目を優先する傾向が支配する。でも、やっぱり味…食べた人を幸せの笑顔に導くようなもの…でなければならない。

14歳になったヤジッドは、夢の実現のため行動にでる。児童養護施設のある町エペルネから、修行の場となるパリの高級レストランへの片道180キロの通勤。180キロと言えば、岐阜からなら京都のちょっと手前まで行ける距離。時には野宿で凌ぎ、また激しい人種差別や妬み虐めにもめげることなく、目標達成のため信念を貫く。

やがて、パリの名店を渡り歩き、ついにはモナコのジョエル・ロブションの系列レストラン "ル・メトロポール" のスーシェフを務めるまでになる。

初監督となるセバスチャン・デュラールはアニメーター出身で、アーティストのミュージックビデオを手がけたキャリアを持つ。

青年期のヤジッドを演じるのは人気YouTuber。

そして、画面を圧倒する数々のスイーツを監修したのはヤジッド本人。

見せる=魅せる技に長けたトリオによる垂涎のスイーツを堪能…あなたは誘惑に勝てるか？