岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

新型コロナが人類共通の敵である今、いがみ合っている場合ではないと思わせる映画

2020年05月29日

最高の花婿 アンコール

© 2018 LES FILMS DU PREMIER - LES FILMS DU 24 - TF1 FILMS PRODUCTION

【出演】クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビー、メディ・サドゥアン、アリ・アビタン、フレデリック・チョウ、ヌーム・ディアワラ、フレデリック・ベル、ジュリア・ピアトン、エミリー・カーン、エロディー・フォンタン、パスカル・ンゾンジ、サリマタ・カマテ
【監督・脚本】フィリップ・ドゥ・ショーヴロン

フランス革命のお国柄か、"平等"の思想が根っこにあるのかもしれない

 18世紀後半から出生率が低下したフランスは、労働力の確保という観点で積極的に植民地から移民を受け入れた。2018年の統計では人口の約24%がフランス以外の国にルーツを持つということだ。

 本作の監督フィリップ・ドゥ・ショーヴロンは、そういう背景と共に、制作のきっかけを「フランスは人種間混合結婚が世界一という統計を知ったこと」と答えている。フランス革命のお国柄か、"平等"の思想が根っこにはあるのかもしれない。

 本作は、典型的なカトリック教徒でフランス大好きなコンサバ親父・クロード(クリスチャン・クラヴィエ)を中心に、よりによって4人の娘が選んだ婿が全員「フランス国民だけど移民」という設定で繰り広げられるフレンチコメディ『最高の花婿』の続編だ。

 今回もギリギリのエスニックジョークが炸裂し、「フランス移民あるある」とばかりのセリフの応酬は、一つひとつの言葉に深みがあり、大いに笑わせてもらいながらフランスにおける移民の状況も分かって知的好奇心をくすぐられる。

 コートを着ていると自爆テロリストと思われてしまうアラブ系、金儲けが大好きだけど失敗続きのユダヤ系、中国人は襲われやすいとお金をおろすにもビクビクの中国系、オセロは黒人の設定なのに何故か白人が選ばれると嘆くアフリカ系。

 中国系の婿が自衛のためにヌンチャクを見ていたら、店員から「ヌンチャクをお探しですか?」と声を掛けられ、反射的に激怒する場面がある。店員に差別意識がなくても、ステレオタイプに見られていると感じてしまったのだ。その彼も、庭仕事をする難民がチェーンソーを持っているだけで手裏剣を投げてしまう。差別ってなんだろう?と考えさせられる秀逸なシーンだ。

 政治、宗教、文化、人種、行動などタブーに切り込みながら、全てをネタにし、爆笑させる。いま、人類共通の敵は新型コロナであり、いがみ合っている場合ではないと思わせる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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