岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

心に傷を負った人達の群像ドラマ

2020年04月18日

閉鎖病棟 それぞれの朝

©1994帚木蓬生/新潮社 ©2019「閉鎖病棟」製作委員会

【出演】笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈
【監督・脚本】平山秀幸

癒しの場所〜その現実と理想との葛藤

 原作は帚木蓬生が1994年に発表した「閉鎖病棟」(新潮社)で、これが2度目の映画化となる。舞台となるのは長野県のとある精神病院で、様々な症状の患者たちの生活が描かれる。主人公となるのは、元死刑囚の梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)で、執行された絞死刑から蘇生したという設定だが、そういう実例は過去、明治期に1件しかない。回想として彼が犯した罪が語られ、死刑執行のアクシデントによって、法的には死亡していると認定される。日常は車椅子を使い、病院内の作業場=工房で、陶芸をしている。

 塚本中弥(綾野剛)はサラリーマンだったが、幻聴に悩まされて休職することになってしまった。時に常軌を逸する様子を見かねた妹夫婦によって、強制的に入院させられることになった。普段は何ら支障のない暮らし、まわりからもチュウさんと呼ばれ信頼されているが、突然、発作に襲われることがある。

 島崎由紀(小松菜奈)は、父親からのDVが原因で心にも傷を負った女子高生。人間不信が強く、病院に連れてこられたことにも強い拒絶感がある。

 時代設定は、原作が書かれた当時から、2006〜08年頃に変更されている。精神病院の実態が如何なるものなのかは分からないが、この病院は開放的過ぎるように見える。患者だけのグループで外出もするし、外泊届けを出せば、そういう自由も許されている。題名にある閉鎖というくくりからはかけ離れて見える。精神病院のあり方は、この10年あまりで何か変化があったのだろうか?

 様々な事情を抱えた患者と、それを支える医療従事者には、なるべく自由にという方針と背中合わせに、ある種の緊張感が存在するのが通常だろう。映画に登場する病院は、医療における理想的な姿を希求したものかも知れないが、終盤の事件の発端にしても、犯罪的な行為を見過ごす監視看護の甘さが見えてしまうのは辛い。この違和感が拭えないままでは、残念ながら、心の救済とテーマは届いてこない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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