岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

異例の快挙に輝く快(怪)作

2020年04月19日

パラサイト 半地下の家族

©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

【出演】ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
【監督】ポン・ジュノ

寄生で才能を発揮する不可解な家族

 キム一家は半地下の賃貸住宅に暮らしている。父親(ソン・ガンホ)は流行に便乗した"台湾カステラ”の出店で失敗して、今は定職にも就いていない。息子(チェ・ウシク)は階上の住人のWi-Fiの盗受信ができなくなったことで慌てている。母親(チャン・ヘジン)も娘(パク・ソダム)も職には就いておらず、通信手段が絶たれることは問題だが、先の事を気にかけるような素振りはなく、取り敢えずの食い扶持は宅配ピザ店の箱容器の組み立てをする内職だった。

 韓国の半地下住宅は、朝鮮戦争の遺産とされている。軍事政権下、北からの脅威に危機感を感じた政府は、ソウル(都市部)の新築の低層住宅に地下室の設置を義務づけた。これは防空壕=シェルターを意味する。幸いにもシェルターとして使用する機会は訪れなかったが、次に住宅事情の悪化が近々の課題として持ち上がる。そこで注目されたのがシェルターを住宅として利用することで、賃貸への転用は一石二鳥の妙案となった。

 キム家の長男は友人から紹介された家庭教師の口を得て、高台に住む裕福なパク家の娘の個人教授となる。それには学歴の偽造が絡んでいて、その企みには姉も加担する。

 キム家が不可思議なのは、直面する課題に旺盛な適応能力をみせるのに、社会構造の中にあってはなぜか爪弾きにされていることだ。

 長男に続き、姉はパク家の長男の美術教師となり、制御不能の怪獣息子をなんなく手懐ける。

 キム家のパク家へのパラサイト=寄生は、それにとどまることなく続き、父親は運転手、母親は家政婦となる。

 混沌とした半地下と、高台の豪奢な生活の格差をスタイリッシュな映像感覚で見せ、物語の進行には大胆な力業の剛腕を奮うポン・ジュノ監督の演出力は秀抜。ただ、"臭い”を差別の引き鉄にするならば、自らの住まいの地下室や留守中の宴会の臭いに気付かないことなど、次第に露見するリアリティの欠如が気になる。後半の過剰な展開は韓国映画がよく陥るパターンで、高評価とは裏腹に個人的には好みではない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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