岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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死とは何か、生きる意味や大切さを静かに問うた慎みのある映画

2020年04月14日

みとりし

©2019「みとりし」製作委員会

【出演】榎木孝明、村上穂乃佳、高崎翔太、斉藤暁、大方斐紗子、堀田眞三、片桐夕子、石濱朗、仁科貴、みかん、西沢仁太、藤重政孝、杉本有美、松永渚、大地泰仁、白石糸、川下大洋、河合美智子、つみきみほ、金山一彦、宇梶剛士、櫻井淳子
【監督・脚本】白羽弥仁

厳しい場面もあるが、穏やかに支えてくれる

 2019年の敬老の日に総務省から発表されたデータによると、日本の高齢者(65歳以上)は3588万人と過去最多となっており、総人口に対する割合も28.4%と世界で最も高い。高齢者が多いという事は死亡する人数も多いという事で、日本は「多死社会」という新たなフェーズを迎えつつある。また周囲に気づかれず1人で息を引き取る「孤独死」のケースも年間3万人以上と推定されている。

 そういう時代の中で、死を受け入れ残された時間を有意義に自分らしく生きるために、身体的・精神的苦痛を緩和・軽減し、「誰にも訪れる旅立ちの時を安心して幸せに迎えられるようにする」(日本看取り士会より)のが看取り介護である。

 本作は、死亡する本人やその家族に寄り添って尊厳ある死を迎えるお手伝いをし、さらには自らの死生観をも見つめ直す事の多い看取り士の活動を通して、死とは何かを考えさせられると同時に、生きることの意味や大切さを静かに問うた慎みのある映画だ。

 娘を交通事故で亡くし、家族はバラバラになってしまった会社の部長・柴(榎木孝明)は、喪失感からうつ状態になるが、自死直前で「生きろ」という天の言葉で思いとどまり、会社を辞め看取り士の組織を作る。新人看取り士のみのり(村上穂乃佳)は母を亡くした寂しさから、死に関する本を買おうとし、本屋の店員から「絶対死なないでね」と強く抱きしめられる。

 映画はこの2人の看取り士と、地域医療を支える医師・清原(斉藤暁)、自治医大出の新人医師・早川(高崎翔太)を中心に展開し、様々な看取りの場面を厳粛に見守っていく。腕を首の下に入れて支え、もう一方で手を握るか手を胸に添え、呼吸を合わせる。最後は、すうっと息が消え「安らかな死」を迎える。

 美しい山々に囲まれた備中高梁の風景や人情には優しさと温もりがあり、厳しい場面もある映画だが穏やかに支えてくれる。思いがいっぱい詰まった映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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