岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

『Love Letter』の姉妹編とも言える瑞々しい恋愛映画

2020年03月23日

ラストレター

©2020「ラストレター」製作委員会

【出演】松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、小室等、水越けいこ、木内みどり、鈴木慶一/豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治
【監督・脚本・編集】岩井俊二

少女のピュアな魅力を引き出し輝かせる岩井俊二

 岩井俊二監督の待望の新作『ラストレター』は、長編デビュー作『Love Letter』の姉妹編とも言えるラブストーリーだ。『Love Letter』から25年の歳月が流れているのに、こんなに瑞々しい映画が撮れる監督が他にいるだろうか。

 両作品とも、文通をきっかけに過去と現在を繋ぐ恋模様が描かれる。そして、そこに一人二役のキャスティングが大きな役割を果たしている。さらには、手紙以外にも図書館や本など、両作品には共通の場所やアイテムが散りばめられ、忘れえぬ初恋の記憶や、愛する人の死が重要なモチーフであることも共通している。

 恋愛映画は切ないほど良いのが私の持論だが、岩井俊二の恋愛映画は文句なしに切ない。そして、美しくて残酷でもある。叶えられなかった恋愛ほど、長く引きずるものだ。この作品の主人公である乙坂鏡史郎(福山雅治)のように。そして、彼から最愛の女性だった未咲を奪った男(豊川悦司)が言い放った言葉が鏡史郎を動揺させ、観客の甘いロマンチシズムも打ち砕く。岩井俊二の作品は決して甘いだけではないのだ。

 クールさを消して純な男を演じる福山雅治。『四月物語』のキャラクターを継承したような役を演じる松たか子。『Love Letter』とは真逆の印象のカップルを演じる豊川悦司と中山美穂。そして『花とアリス』の鈴木杏と蒼井優を彷彿とさせる、ふたりの美少女・広瀬すずと森七菜。俳優陣は皆好演だが、とりわけ広瀬すずと森七菜が素晴らしい。岩井俊二は、なぜいつも少女たちのピュアな魅力を引き出し、輝かせることができるのだろう。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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