岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

現代の闇をリアルに見つめた衝撃作

2020年03月24日

レ・ミゼラブル

© SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

【出演】ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ、ジャンヌ・バリバール
【監督・脚本】ラジ・リ

格差社会象徴する場で発生する怒りの噴出

 フランス映画には「郊外映画」と呼ばれる作品がある。そのはじまりは80年代頃からなのだが、近年その意識は高くなっている。それは、社会問題化する格差を象徴する場を指す。

 フランス・パリの郊外は、19世紀後半から工業地帯として発展した。戦後には、アフリカの旧植民地から多くの労働者が動員されるようになり、70年代以降には、貧困化とそれに伴う治安の悪化が進行した。

 『レ・ミゼラブル』の舞台となる"モンフェルメイユ"は、60年代に開発が始まった。当初はパリ中心部や空港に直結する高速道路が建設される計画だったが、これが中止されたことで、パリまではバスや電車を乗り継いで、1時間半もかかる陸の孤島となってしまった。ミドルクラス用の住宅地はその不便さから転売され、賃貸化され、結果として貧しい人々が集まる地域となった。

 ビクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」が書かれたのは1862年のことで、小説の舞台でもあるモンフェルメイユ地区というのは、当時、既に犯罪多発地域だった。近年の傾向はそれに諸条件が加わり悲惨(ミゼラブル)な地域化に拍車がかかったことになる。

 ステファン(ダミアン・ボナール)は犯罪防止班に配属される。チームを組むのはクリス(アレクシス・マネンティ)とグワダ(ジェブリル・ゾンガ)で、日常のパトロールには彼らなりの流儀があるのだが、その強権的なやり方にステファンは戸惑う。地域には出身地や宗教別にいくつかの集団があり、微妙な緊張関係の重苦しい空気が立ち込めていた。

 ある日、街に来ていたサーカス団から子ライオンが盗まれる。容疑者としてイッサという名の少年が浮かび上がり、集団間ではそれをめぐる主導権争いの綱引きが始まる。それを知った警察も抑圧に加わるのだが、騒動のうねりはもはや手のつけられない状況へ動き出す。

 監督・脚本のラジ・リは自身もアフリカ系移民の血筋で、モンフェルメイユ出身でもある。初の長編にして高い完成度は体験から生まれた。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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