岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

あたかもライブ映像のようなリアリティで蘇らせた、ドキュメンタリーの道しるべとなる作品

2020年03月25日

彼らは生きていた

© 2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

【製作・監督】ピーター・ジャクソン

100年前の出来事は歴史の彼方にあるのでなく、今に繋がっている

 第一次世界大戦(1914年~18年)は、戦死者約1700万人という人類史上初めての大量殺戮戦であった。戦略的には、敵の機関銃攻撃を防御するために身を守る穴を掘っていった「塹壕戦」が中心で、無謀な突撃を繰り返した昔ながらの戦術は、意気に感じたヨーロッパの若者たちの命を軽んじ、死屍累々の死者を出すに至った戦いであった。

 1894年に発明された映画は、劇映画に先んじて1898年の米西戦争を皮切りに1904年~05年の日露戦争などのニュース映像で、活気づいていた。

 初期の無声映画は映写速度が定まらないカクカクの映像で、無声のモノクロームという「骨董作品」というイメージであったが、ピーター・ジャクソン監督が作った本作は、100年以上前に撮影された戦争の記録映像を最新のデジタル技術により、あたかもライブ映像のようなリアリティで蘇らせた、戦争の無意味さや悲惨さを伝える画期的なドキュメンタリーであり、今後の道しるべとなる作品である。

 映画の技術は、音が入り色が付くという歴史をたどっていく。サイレントやモノクロという制約の中で個性あふれる独特の表現で作られた劇映画には、カラー化などという改竄は許されないが、記録映像はリアリティがある方がいい。

 モノクロームだと、歴史の教科書上の遠い出来事のように感じても、カラーになると途端に身近に感じる。数年前に放映されたNHKの特集で昔の白黒映像がカラー化された番組があったが、日本軍隊の軍服とか、空襲後の市民の肌の色、戦後の東京の様子など「過去」が「現在」に繋がってきた。『彼らは生きていた』は、そういった技術をさらに進化させ驚くべきクオリティとなって、我々の前に登場したのだ。

 本作の価値は、テロや戦争の危機がある現在の世の中にとって、100年前の出来事が歴史の彼方にあるのでなく、今に繋がっていると気が付くことができる点にある。凄い作品が現れた。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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