岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

監督、キャスト、音楽…時を経てもすべてが揃った奇跡の作品

2020年03月20日

男と女 人生最良の日々

© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma

【出演】アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、スアド・アミドゥ、アントワーヌ・シレ
【監督】クロード・ルルーシュ

人生最晩年の恋愛映画としても成立している

 高校生まではごく普通の映画ファンであった私が、大学の映画研究会で出会った友人によって、今でいうアート系映画を知ることとなる。当時フランス映画といえばアラン・ドロンしか知らないウブな私には、名画座で観た『男と女』は眩しすぎた。「ダバダバダ、ダバダバダ…」のスキャットには、「これがそうか」と感動したが、映画自体はサラサラ流れていくだけ。素晴らしさが分かったのは、数年経った3度目の鑑賞以降である。子どもには、大人の恋愛が分かるには早すぎたのだ。

 当時無名のクロード・ルルーシュ監督が、街角アコーディオン奏者のフランシス・レイの音楽に合わせて、即興演出で撮った自主製作映画が『男と女』。それから53年。映画に関わったスタッフや出演者、魅了された観客、実人生では平穏に過ごした人もあれば、波乱万丈だった人もいるだろう。

 本作は、燃えるような恋をした当時30代のアヌーク・エーメ(役名アンヌ)とジャン=ルイ・トランティニャン(役名ジャン・ルイ)が80代半ばにさしかかり、特にジャン・ルイの記憶が混濁した中で、懐かしむように逢瀬を楽しむ様子が描かれる。差しはさまれる1966年の映像と今の姿を見ていると、映画や恋愛にキラキラしていた自分自身の遠い昔のことが思い出され、泣かずにはいられない。

 主演の2人が健在なので実現できた映画であるが、2人のそれぞれの娘と息子を演じたアントワーヌ・シレとスアド・アミドゥが、同じ役で出ているのがまた凄い。ルルーシュ監督はもちろん、本作が遺作のフランシス・レイが音楽を付けるなど、奇跡の作品である。

 映画は不朽の名作の正統な続編として成功しているが、人生最晩年の恋愛映画としても成立している。燃えるような恋をした2人の微笑ましくも羨ましいドライブデート。昔の恋人に出会った時、苦かった出来事などすべて許せて、甘酸っぱい思い出だけが残る感覚。素晴らしい映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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