岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

すべてがツボにはまった“偏愛映画”

2020年03月23日

ラストレター

©2020「ラストレター」製作委員会

【出演】松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、小室等、水越けいこ、木内みどり、鈴木慶一/豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治
【監督・脚本・編集】岩井俊二

映像美と雰囲気、ロマンチシズムとノスタルジー…まさに“考えるな、感じろ”

 映画の評価とは不思議なものである。たとえ完成度は高くなくても好きな映画が存在する一方、完成度は高くても嫌いな映画も存在する。この『ラストレター』、完成度は高くないものの、非常に好きな、いわば“偏愛映画”である。

 毎度のことながら、岩井俊二独特の映像美に圧倒される。広瀬すず、森七菜の魅力を最大限に引き出し、瑞々しさあふれる映像となっている。この2人の可愛さと美しい映像が完璧に融合し、両者を高め合っているのだ。他にも、松たか子の美しさや神木隆之介の瑞々しさが強調され、全編を美しく彩っている。そして、ストーリーもロマンティックであり、さらに福山雅治演じる乙坂鏡史郎という青春を引きずる人物を登場させることでノスタルジーをも感じさせる。

 そして、このSNS全盛の時代にあえて“手紙”を取り上げ、人への想いをモノが媒介して伝わることの切なさと素晴らしさを描いたことが、映画をさらにノスタルジックにしている。形として残り、たとえ言葉にしなくても、その人に会えなくても想いが伝わる。そして、それは時を超えることができる。時を超えて想いが伝わったときの切なさが私は好きだ。

 つまり、本作は全編を美しいものだけで埋め尽くした映画であり、ストーリーの整合性より雰囲気を作り出すことに重点が置かれた作品であると言える。(実は1ヶ所だけダークなシーンがあるのだが、それがより他のシーンの美しさを際立たせている) したがって、我々観客は映像美と雰囲気、ロマンチシズムとノスタルジーに酔えばいい。まさに“考えるな、感じろ”である。

 ストーリーの突っ込みどころは多々あれど、映像、セリフ、展開、雰囲気、そのどれもが私のツボにはまった偏愛映画。この手の映画が好きな人はぜひ映画館で酔いしれてほしい。

語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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