岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

爆弾テロ容疑者にされた男の闘いの実話

2020年03月13日

リチャード・ジュエル

© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

【出演】サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ポール・ウォルター・ハウザー、オリビア・ワイルド、ジョン・ハム
【監督・製作】クリント・イーストウッド

誹謗中傷が飛び交うネット社会への警告

 テロは現在も進行形で侵攻し強行される。政治や民族や宗教が絡みあい、世界の各地で牙を剥く。ところが日本ではどこか他人事で、遠い場所で起きていることと、楽観しているところがある。映画ではかつて、IRAのテロリストが鮮烈な印象を残した。しかし、現実に起きている中東やイスラムの地で繰り返されている殺戮は、テロの正体さえ不確かにしているところがある。政府か?反政府か?反体制か?原理主義か?殺されるのは何ら無害な市民か?その陰にテロリストは潜んでいるのか…?

 『リチャード・ジュエル』は1996年、アトランタ・オリンピック開催中に起きた爆弾テロ事件を材にしている。20年以上前の事件の記憶は稀薄であり、その事件の陰にあったもうひとつのテロに至っては、知らなかったこと、と懺悔しなければならない。

 警備員のリチャード・ジュエルは人一倍の使命感と誇りを持ち、その日もオリンピックのイベントで賑わうアトランタのセンテルニア公園で、巡回警備の仕事についていた。そして、ベンチの下に置かれた不審なバッグを発見する。中身が爆弾であることが判り、張り詰めた緊張感の中、ジュエルは人々の避難を誘導するのだが、爆発は起きてしまう。

 FBIを中心に事件の捜査が始まる。それに追随してマスコミも動きだす。そして、容疑者にピックアップされたのはジュエルだった。捜査初期の情報は地元新聞の女性記者にリークされる。それはスクープとなり、他の新聞やテレビ局もたちまち容疑者に群がる。さらに、実名報道されたことで報道は過熱し、捜査も容疑者確定のための実力行使に乗りだす。

 ジュエルの人物像は平凡なという括りではない。度を越すミリタリーマニアで、官吏になれなかった挫折やコンプレックスも曝け出す。それは、プライバシーを剥ぎ取るメディアの暴力と同意である。もうひとつのテロは、傍観者が加害者となり、標的となる無実の被害者を作り出してしまうことである。

 イーストウッド、もうすぐ90歳!衰え知らず。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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