岐阜新聞 映画部

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捜査機関やマスメディアの横暴さを戒めたイーストウッド最新作

2020年03月13日

リチャード・ジュエル

© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

【出演】サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ポール・ウォルター・ハウザー、オリビア・ワイルド、ジョン・ハム
【監督・製作】クリント・イーストウッド

ヒーローになりたかったわけではなく、職務に忠実であろうとした

 私が生涯で初めて映画館で観た洋画は『ダーティハリー』である。『燃えよドラゴン』と2本立てだったが、こちらが先の上映。以来、私にとってクリント・イーストウッドはアメリカン・タフガイの象徴であり、傑作を連発する映画界の巨匠であるとともに、ハリウッドでは珍しい共和党支持者のイメージであった。

 最近の監督作では英雄や成功者の実話が多かったが、本作の主人公リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、警備員として勤務していたアトランタ五輪の時、爆発物を発見し事件を未然に防いだ英雄から一転、容疑者扱いされた不幸な人物である。

 彼の不幸は、アメリカ人がイメージする英雄像から、かけ離れていたからかもしれない。独身で親から独立してない上、体形は太っておりルックスもよくない。真面目だが不器用で融通が利かない。

 テレビの前の観衆にとって「期待していたカッコいいヒーロー」でないと注目が集まらないので、視聴率や特ダネが欲しいマスメディアは「意外とこいつが犯人だったら面白い」というバイアスのもと、「人の不幸は蜜の味」に仕立て上げて注目させるのだ。

 一刻も早く犯人を検挙したい警察だって同じことだ。「第一発見者を疑え」は捜査の鉄則であろうが、初めから彼が犯人だと決めてかかっている。彼の「警備員なので犯人逮捕に協力したい」という善意の気持ちを逆手にとって、言葉巧みに都合のいい言葉を引き出そうとする。証拠はあとからいくらでも捏造されそうだ。

 リチャードは過剰なくらい正義に燃えて、規則通りに警備していて煙たがられたり仕事を首になったりもするが、結果的にその性格が爆発物入りバックを発見することに繋がっていく。彼はヒーローになりたかったわけではなく、あくまでも職務に忠実であろうとしたのだ。

 イーストウッドが捜査機関やマスメディアの横暴さを戒め、地道な警備の大切さにリスペクトした映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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