岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

生のアメリカを物語るヒップでホップな映画

2020年02月17日

ブラインドスポッティング

© 2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED

【出演】ダヴィード・ディグス、ラファエル・カザル、ジャニナ・ガヴァンカー
【監督】カルロス・ロペス・エストラーダ

この瞬間のアメリカ社会の現状が、ビシバシ伝わってくる。

 CINEXの「第3回加藤るみの映画館で会いましょう。」で『ブラインドスポッティング』を観る。上映後のトークショーでは、るみさんの映画愛に溢れる熱い語り口と鋭い分析で、映画の厚みがさらに増してきた。

 サンフランシスコ湾の東側に位置するオークランド。西海岸特有の開放的で陽気な街に生まれ育ち、この街を愛してやまない幼馴染の黒人青年コリン(ダヴィード・ディグス)と白人青年マイルズ(ラファエル・カザル)の、人生で最も平穏に過ごしたい3日間を、ヒップホップのリズムに乗せて描いた、ポップでキャッチーな地元密着映画である。

 現瞬間のアメリカ社会、それもリベラルと言われている都市での肌感覚での現状が、画面を通じてビシバシ伝わってくる。

 るみさんも言及していたが、黒人のコリンが白人のマイルズに対して「ニガー」と呼ぶ。「ニガー」は黒人の蔑称であるが、最近では親しみを込めて「よお、兄弟」ぐらいで使っているようだ。しかし、マイルズはコリンを「ニガー」とは呼べない。幼馴染で一緒の引っ越し会社に勤めている仲なのに、自分ではどうしようもない差別意識があるのかもしれない。ブラインドスポッティング=盲点なのだ。

 そもそも映画の発端は、コリンの目の前で、黒人青年が白人警察官に射殺されるところから始まる。その行為は映画の中でも批判的に描かれ、同じことをやっても白人だったら殺されないという不正義があぶりだされる。

 貧乏だけど地元のヤンキーとしてブイブイ言わせてきたコリンやマイルズ。低所得者層が多いけど、それなりに秩序を保って楽しく暮らしていた街に、IT系の「イキッた」高所得者たちが入ってくる。街はきれいになったけど物価はどんどん高騰し、彼らはいけ好かない音楽を聴き、我が物顔でオークランドを語る。

 黒人と白人に加え、旧住民と新住民の対立という新たな問題も出てきた。生のアメリカを物語るヒップでホップな映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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