岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

すべては土台に経済的基盤があるという着眼点が面白い

2020年01月25日

決算!忠臣蔵

© 2019「決算!忠臣蔵」製作委員会

【出演】堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、妻夫木聡、荒川良々、竹内結子、西川きよし、石原さとみ、阿部サダヲ
【脚本・監督】中村義洋

新しい視点での忠臣蔵はいくつあってもいい

 私の地元は西尾市東幡豆町であるが、その隣の西尾市吉良町は忠臣蔵の敵役・吉良上野介の領地である。地元では名君として親しまれ、市制60周年記念講演で石坂浩二さんが「まるで身に覚えのない遺恨で浅野内匠頭に切り付けられた吉良上野介が、お上に称賛してもらおうとの魂胆から赤穂浪士に討ち入りという名目で惨殺された悲劇」と史実に基づき話していただけたのには溜飲が下がった。

 瓦版売りや戯作者などの江戸時代のマスコミによって、大衆受けしようと勝手に史実を捻じ曲げて作られた物語が、いつしか真実だと信じられていったのが忠臣蔵である(諸説あります)。

 本作が私にとって面白かったのは、その着眼点である。「数字は嘘をつかない」というが、「忠君愛国」などの犠牲的精神が発揮できるのも、すべては土台に経済的基盤があるという点だ。討ち入りにかかった費用を現在の貨幣価値に換算すると9500万円。意外に安いと感じるが、それもこれも残された資料に基づいて、ひとつひとつ経費を積み上げていったリアリティがあるからこそである。ちなみに日本が第二次大戦に費やした費用は、現在の貨幣価値で約4400兆円と言われており、こういった観点で「忠臣蔵」も見ていくと、戦うには莫大な費用がかかるのだと現実的に実感ができる。

 映画では、赤穂浪士たちみんなコテコテの大阪弁を喋っている。赤穂は播州(兵庫県)だし、そもそも浅野家は常陸国(茨城県)からの転勤族なので、武士たちが大阪弁というのは甚だ疑問だが、これは「もしかしたら」と面白がればいいのだ。明治時代に江戸弁を元に作られた標準語だって、江戸時代は誰もそんな言葉では喋っていない。

 私は吉良町の隣に住んでいるからといって決して忠臣蔵が嫌いではない。赤穂浪士も吉良上野介も、徳川幕府による徹底した統治の犠牲者であると思う。ナチスものと同様、新しい視点での忠臣蔵はいくつあってもいいのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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