岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

可愛らしくて親近感がわいてくる素敵な映画

2020年01月26日

私のちいさなお葬式

©OOO≪KinoKlaster≫,2017r.

【出演】マリーナ・ネヨーロワ、アリーサ・フレインドリフ、エヴゲーニー・ミローノフ、ナタリヤ・スルコワ、セルゲイ・プスケパリス
【監督】ウラジーミル・コット

死がテーマにも関わらず、生きる豊かさを感じられる

 30数年に渡ってやり取りをしてきた80代半ばの元同僚の年賀状に、「年賀状じまい」のメッセージが添えられていた。人それぞれの終活であり、寂しさと共に、一緒に働いていた時の懐かしさが走馬灯の様に浮かんでは消えてきた。

 本作はロシアの片田舎で教師をしてきた73歳のエレーナ(マリーナ・ネヨーロワ)が、突然の余命宣告を機に、ロシアの官僚的な制度をユーモアたっぷりにおちょくりながら、人生の最後を明るく受け入れていく迄を描いたチャーミングな映画だ。死がテーマであるにも関わらず、むしろ生きる豊かさを感じられるところに、この映画の奥深さがある。

 エレーナが自分のためのお葬式を綿密に計画し、段取りをすべて整えていく過程が実に面白い。隣り近所の仲良しばあさんや、教え子たちの伝手を使って、着々と準備していく。中でも、生きているのにこっそりもらった自分の死亡診断書を戸籍登録所に持っていって、本人に埋葬許可証を交付するなど、書類さえあれば問題ないという官僚主義が大いに笑わせる。あわててモスクワから駆け付けた、実業家の息子の出る幕なしである。

 原題の英訳は「Thawed Carp」(解凍された鯉)。教え子が釣ってきた鯉を、無理やり押し付けられたエレーナは、とりあえず鯉を冷凍庫に保存しておく。そして5年ぶりに帰ってきた息子をもてなそうと鯉を解凍したら、生き返ったのでタライで飼うことにする。

 冷凍の鯉は一人暮らしだったエレーナの象徴であり、生き返った鯉は自慢の息子が返ってきて喜んだり、生き生きとお葬式計画を練る今のエレーナの姿である。息子の車のカギを鯉が飲み込んでしまい、最初は解剖して取り出そうとするが、最後に息子はある決断をする。

 ザ・ピーナッツの純然たる日本の歌謡曲「恋のバカンス」のロシア語バージョンがエレーナと亡き夫との思い出の曲だったなど、可愛らしくて親近感がわいてくる素敵な映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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