岐阜新聞 映画部

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彼女の戦い続ける人生の本質をコンパクトにまとめたドキュメンタリー映画

2020年01月10日

草間彌生∞INFINITY

Portrait of Yayoi Kusama in her studio. Image © Yayoi Kusama. Courtesy of David Zwirner, New York; Ota Fine Arts, Tokyo/Singapore/Shanghai; Victoria Miro, London;

【出演】草間彌生 ほか
【監督・脚本・プロデューサー】ヘザー・レンズ

故郷・松本への言葉には、涙が出てくる

 第8回岐阜新聞映画部アートサロンにて『草間彌生∞INFINITY』を観る。上映後のトークイベントは、岐阜県美術館学芸員の廣江泰孝さん。興味深く知的好奇心を満たしてくれる話の数々、例えば現代の画家で日本や世界で知られている3人は岡本太郎、藤田嗣治、そして草間彌生さんだとか、岐阜県美術館に収蔵品が1枚も無いわけなど、最後まで楽しいトークショーだった。

 90歳を超えても未だアグレッシブな表現活動を続ける文化勲章受章者・草間彌生さんに迫った本作は、彼女の戦い続ける人生の本質を、本人が語る言葉を中心に、その作品や当時の映像、写真などを効果的に使い、コンパクトにまとめられたとても面白いドキュメンタリー映画である。

 彼女の表現の原点は、裕福ではあったが両親が不仲で、放蕩な父親と無理解な母親のもとで育った幼少期。そして戦争を体験し、文化の破壊者たる戦争を憎んだ少女の時代にあることが分かる。

 1ドル360円で渡航制限がかかっていた1957年、彼女は単身渡米する。人種差別、女性差別が当たり前のような時代、どんなに心細かったことだろう。無限の荒野の中で戦い続ける彼女。不断の努力で認められつつあったが、自分のアイデアは盗用され、そちらの方が注目を浴びていくジレンマ。どんなに悔しかったことだろう。

 彼女が語る言葉からは、悔しさをバネに、くじけず、腐らず、めげなかったアメリカ時代の様子が淡々と語られる。実名がどんどん出てきて、実に生々しいのだ。

 彼女の過激なハプニング=パフォーマンスが、1960年代後半に行われたこと。「これが芸術家?」と蔑まれ、バッシングされたこと。凄いことをやってのけたんだと感動する。

 1990年以降、世界的に再評価され、今や日本の美術界の現役のトップランナーである草間彌生さん。嫌な思い出しかなかった故郷・松本に「錦が飾れた」との言葉には、涙が出てくるのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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