岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

画家が描いたものを擬似体験する瞬間

2020年01月03日

永遠の門 ゴッホの見た未来

© Walk Home Productions LLC 2018

【出演】ウィレム・デフォー、オスカー・アイザック、マッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリック
【監督・脚本】ジュリアン・シュナーベル

ウィレム・デフォーにゴッホが乗り移った!

 画家はそこにいる。そこにあるカンバスと対峙する。絵具は形に変化し、色が輝き始める。

 画家はフィンセント・ファン・ゴッホ。目に見えたものを表現することが絵を描くこと。

 ゴッホを描く映画は数多い。つい最近も『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』が公開されたばかりだ。生前は1枚しか絵が売れなかった画家を発見し、後世に伝えた女性、クレラー夫人を見つめたドキュメンタリーだった。

 画家のまわりにはさまざまな人が集う。ゴッホは人を愛し、何より愛されたいと希求した。それに反していつも孤独だった。

 『永遠の門 ゴッホの見た未来』は、アルルに移住した後、オーベル・シュル・オワーズに移る最後の2年間を切り取っている。狂気と背中合わせの孤独が色濃く漂う時間。

 ゴッホを演じるのはウィレム・デフォー。自画像のそれと生写しのように見える。髭を蓄えたくらいで、ほとんどノーメイクで、まるで画家が乗り移ったかのようだ。

 監督はジュリアン・シュナーベル。『バスキア』を映画化し、自らも画家としてアーティストとして活動している。本作で映し出されるゴッホの絵は、監督が描いたものも数多く登場する。ウィレム・デフォーは監督のアトリエに通い、筆使いの指導も受けたという。

 絵を展示するために借りたカフェの壁から絵を剥がされ、子どもたちには嘲笑を浴びせられる。怒りと失望の淵に立たされながらも、画家を創作に向かわせたのは何なのか?

 ひまわり畑で花と戯れ、大地に倒れ乾いた土を浴び、草原に吹く風を身体中に感じる。

 映画はゴッホの見たものをスクリーンというカンバスに描こうとする。光は洪水となって溢れ、画面はモザイクのように分断される。そして、画家の言葉は哲学者のそれのように響く。

 「何故、絵を描くのか?」と牧師は画家に問う…「未来の人たちに向けて描いている」…諦念の先に見える希望が哀しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る