岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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イギリスが憧れだった時代を懐かしんでいるかの様なノスタルジー映画

2019年12月21日

イエスタデイ

©Universal Pictures

【出演】ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、ジョエル・フライ、エド・シーラン、ケイト・マッキノン、ジェームズ・コーデン
【監督】ダニー・ボイル

システマティックに売り出していく現代の音楽ビジネスを皮肉っている

 ビートルズがいなかったら、笑点のちびっこ大喜利の座布団10枚から「ずうとるび」は生まれないし、大瀧詠一は「イエロー・サブマリン音頭」を作れなかったし、外国人アーティストの来日時のお約束事、法被を着てタラップを降りるという気恥ずかしさは無かったに違いない。

 本作は、EU離脱問題で世界中にマイナスの衝撃を与えているイギリスが、1960年代には世界中の音楽シーンに革命的な衝撃を与えたビートルズを生み出した国として、憧れだった時代を懐かしんでいるかの様なノスタルジー映画である。

 ストーリーは、「昨日まで、世界中の誰もが知っていたビートルズを、僕以外の誰も知らない」ことに気が付いた売れないシンガーソングライターのジャック(ヒメーシュ・パテル)が、暗記していたビートルズの曲を自分の歌の如く発表していき、あれよあれよとスターになっていく様子を面白おかしく描いている。

 CDも譜面も消え失せている中で、ジャックは美しいメロディラインの再現は出来ているが、詞の方はただ真似しているだけで意味が分かっていない。

 ビートルズの詞は、ストロベリー・フィールズやペニー・レイン、アビイ・ロードなど地元リヴァプールの施設や地名をモチーフにしたものとか、ジョン・レノンが息子を励ますために作った「ヘイ・ジュード」など、個人的なものが少なくない。詞の本当の意味が分からない彼にとって、「ヘイ・ジュード」を「ヘイ・デュード」に変えた方がいいと言われても反論できる知識がないのだ。

 さらに、ビートルズは楽曲の良さだけでなく、アイドルであり、ファッションリーダーであり、60年代のカウンターカルチャーであり、そもそもグループのハーモニーの素晴らしさで時代の寵児となったのだ。そこがジャックには無い。

 映画は、ダニー・ボイル監督がシステマティックに売り出していく現代の音楽ビジネスを皮肉りつつ、ビートルズ愛が溢れている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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