岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ゴッホ入門編として、うってつけの映画

2019年12月20日

ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝

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【案内人】ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
【監督】ジョヴァンニ・ピスカーリア

専門的な解説があると、映画の面白さは2倍にも3倍にもなる。

 第7回岐阜新聞映画部アートサロンにて『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』を観る。上映後のトークイベントは、お馴染み岐阜県美術館学芸員で修復・絵画担当の松岡未紗さん。松岡さんは、昨年オランダにあるこの美術館に、アムステルダムから電車とバスを乗り継いではるばる行ったそうで、中の様子やゴッホ美術館との違いを、臨場感一杯に語っていただいた。

 映画の中に出てくるゴッホの絵画の修復場面は、松岡さんの本職という事もあり、その大胆な手法に驚いていらっしゃった。こういう専門的な解説があると、映画の面白さは2倍にも3倍にもなる。

 ゴッホは1890年に37歳で自死しているが、作品が散逸しなかったのも、ヘレーネ・クレラー=ミュラーのような審美眼のある資産家が、無名のうちから熱心に買い集めて保存してくれていたからに違いない。1990年にゴッホの「医師ガシェの肖像」を151億5000万円で購入した日本人がいるが、ヘレーネさんはあの世でさぞかしびっくりしているだろう。もちろんゴッホ自身も。

 映画はまず、この美術館の成立の経緯や立地、展示方法、修復の様子などをテンポよく見せてくれる。ゴッホの絵画は、国立公園の森の中にありヨーロッパ最大の彫刻庭園をもつこの美術館の中心施設に、統一のとれたシンプルな額縁に収められて展示されている。環境の素晴らしさが映画から見てとれる。

 そして、ゴッホが画家として活動していた10年間を、初心者でも分かるように、順を追って解説してくれる。もちろん、その都度代表作が、クレラー=ミュラー美術館の収蔵品を中心に画として映されており、一目瞭然で理解できる。

 農夫や田園を描いた暗い色調の時代から、印象派や浮世絵などのジャポニズム・点描を取り入れた明るい色調の時代、厚塗りを学び名画が次々と誕生する南仏アルルの時代。ゴッホ入門編として、うってつけの映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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