岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

盲目のテノール歌手の波乱万丈の実話

2019年12月14日

アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール

©2017 Picomedia SRL.

【出演】トビー・セバスチャン、アントニオ・バンデラス
【監督】マイケル・ラドフォード

苦難の時、そこにはかけがえのない出会いがあった

 イタリア・トスカーナの小さな村でアモスは生まれた。幼い頃から眼球の病に悩まされ、幾度となく手術を受けたが、視力は思うように回復しなかった。12歳の時、授業中のサッカーの試合で、顔面にボールが直撃したことで、持病は悪化して、ついには失明してしまう。

 光を失ったアモスは鬱屈した気持ちを身内にぶつけ、ぎこちない雰囲気が家族の中に生まれてしまう。そんな時、アモスの歌声に人々を惹きつける魅力がある事に気付いた叔父は、彼を音楽コンクールに出場させる。そこで見事優勝することになり、光を失った人生に一筋の希望の光が見えたと感じるのだが…。それも束の間、それは声変わりによって挫折してしまう。

 歌手を諦めたアモスは弁護士を目指すが、一般の学校の授業ではままならないことが多い。両親はそんなアモスに個人教授を充てがう。マンツーマンの口述講義は、アモスに学ぶことの喜びを与えてくれる。しかし、盲目のハンデはいくつもの試練として降りかかる。

 酒場でピアノ演奏をしながら歌を唄うことで、音楽への関わりは継続していたアモスだったが、そんな時、数々のオペラ歌手を育てたスペイン人の歌唱指導者マエストロ(アントニオ・バンデラス)と出会う。それは新たな道へ導いてくれることになるのだが…。

 両親や叔父をはじめ周囲の人々の支えなしでは、容易く叶う事のない生き方を、同情や悲観に偏ることなく、細やかに描いたマイケル・ラドフォードの演出が秀抜。特に、エレナとの出会い~恋人としてそして妻として、慎ましやかに見守り、時に叱咤するという存在感が、物語に温もりを与えている。アモスを演じるトビー・セバスチャンの歌唱は全てアンドレア・ボチェッリ本人の吹替えである。

 アンドレア・ボチェッリの唄う「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」は、クラシック音楽のファンでなくとも耳にしたことがあるだろう。人々を魅了するのは、たとえそこに"盲目の"という形容が附属していようと、純に彼の歌声である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る