岐阜新聞 映画部

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クラシックを扱ったエンタメ映画としては出色の出来

2019年12月08日

蜜蜂と遠雷

©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

【出演】松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士(新人)
【監督・脚本・編集】石川慶

プロコフィエフの「ピアノ協奏曲第2番・第3番」などのシーンは鳥肌

 今年6月、「世界三大コンクール」と呼ばれる「チャイコフスキー国際コンクール」で、日本人勢としては17年ぶりの入賞(2位)という快挙を果たした東京音大生・藤田真央君(20)。彼は『蜜蜂と遠雷』で、彗星の如く現れた16歳の「劇薬」風間塵(鈴鹿央士)の演奏部を担当し、この映画の本物性を支えると共に、我々にピアノの素晴らしさを伝えてくれた。

 本作は、第1次予選から本選に至るまでのピアノコンクールの過程を、著名なクラシック音楽だけに頼らず、しかも根性物にもせず、ハウツー物のように分かりやすく端正に描いた音楽映画である。コンクールを勝ち抜いていくためのノウハウ部分も面白く、4人の主人公の音楽に対するアプローチや思いの違いもうまく描き分けられており、クラシックを扱ったエンタメ映画としては出色の出来である。

 風間以外の主人公は、突如表舞台から消えた天才少女・栄伝亜夜(松岡茉優、演奏:河村尚子)、生活者の音楽家・楽器店勤務の高島明石(松坂桃李、演奏:福間洸太朗)、本命の王子様マサル・アナトール(森崎ウィン、演奏:金子三勇士)。風間を含めた4人の天才たちは、お互いを打ち負かすのでなく、リスペクトし合い共鳴しながら、己の力を発揮していく。

 4人の俳優の落ち着いた確かな演技と、新進気鋭のピアニストたちの演奏部は、映画として違和感なくシンクロしリアルに再現されており、始まる直前の緊張感と演奏後の達成感は、まるでコンサート会場にいるような臨場感があり、石川慶監督の演出の非凡さが際立っている。

 この映画のために作られた第2次予選の課題曲「春と修羅」。その後半のカデンツァ(即興パート)のオリジナリティあふれる演奏や、本選でのプロコフィエフの「ピアノ協奏曲第2番・第3番」などのシーンは鳥肌が立ってくる。

 この素晴らしいクラシック映画を岐阜の柳ケ瀬で観るのは、ちょっとお洒落でお似合いである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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