岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品真実 B! 是枝裕和監督の円熟した技量が味わえる逸品 2019年12月06日 真実 ©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA 【出演】カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ・グルニエ、マノン・クラヴェル 【監督・脚本・編集】是枝裕和 脚本の素晴らしさが顕著、3人の俳優の持ち味が見事に生かされている 是枝裕和監督は、侯孝賢とケン・ローチの影響と共に、向田邦子と山田太一のテレビドラマからも大きな影響を受けていると語る。テレビマンユニオンでドキュメンタリー作品から映像作家としてスタートした是枝監督は、その即興的でスケッチのような自然な演出の方がクローズアップされがちだが、自身が書く脚本(そのほとんどがオリジナル)の素晴らしさも忘れてはならない。特に、自然な日常会話の中に登場人物の本音が顔をのぞかせる台詞の上手さは出色だ。そして、彼は撮影現場で自らの脚本に手を加えて、より自然なものにしていく。さらに自身が行う編集作業でも、必要でないシーンなどが削除され、より完成度の高いものが出来上がる。 是枝監督がフランスで撮った『真実』は、彼の脚本の素晴らしさが顕著な秀作だ。カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークという国際的スター3人が共演する豪華な作品だが、日本人監督が撮ったとは思えないほど自然なフランス映画になっているのが驚きだ。しかも、3人の俳優としての持ち味が見事に生かされている。 カトリーヌ・ドヌーヴ演じる大女優が「真実」というタイトルの自伝本を出版し、その出版祝いの名目で娘夫婦と孫がアメリカからやってくる。脚本家として活躍する娘(ジュリエット・ビノシュ)と母親(ドヌーヴ)とのわだかまりが、劇中劇として描かれる撮影中の主演映画(母娘物)を効果的に絡めて描かれる。日常会話の中で過去の母娘の関係があぶりだされる旨さと、重層的な構成が相乗効果となり、作品をよりニュアンスに富んだ魅力的なものにしている。 『万引き家族』のような社会性や深みはないが、是枝裕和監督の円熟した技量が味わえる逸品である。 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 2023年12月08日 / 『インファナル・アフェア 4K』3部作 香港ノアールの代表作がスクリーンで甦る 2023年12月08日 / 『インファナル・アフェア 4K』3部作 4Kで蘇った、香港製フィルムノワールの傑作 2023年12月08日 / 映画(窒息) セリフは一切なくモノクローム、これぞ作家の映画だ more 2020年12月23日 / 早稲田松竹映画劇場(東京都) 学生街に今も残る昔ながらの二本立て名画座 2020年03月18日 / 布施ラインシネマ(大阪府) 大阪の下町で地元の人たちに愛されてきた映画館 2023年07月12日 / シネマブルースタジオ(東京都) 東京の下町にある複合文化施設で世界の名作を堪能。 more
脚本の素晴らしさが顕著、3人の俳優の持ち味が見事に生かされている
是枝裕和監督は、侯孝賢とケン・ローチの影響と共に、向田邦子と山田太一のテレビドラマからも大きな影響を受けていると語る。テレビマンユニオンでドキュメンタリー作品から映像作家としてスタートした是枝監督は、その即興的でスケッチのような自然な演出の方がクローズアップされがちだが、自身が書く脚本(そのほとんどがオリジナル)の素晴らしさも忘れてはならない。特に、自然な日常会話の中に登場人物の本音が顔をのぞかせる台詞の上手さは出色だ。そして、彼は撮影現場で自らの脚本に手を加えて、より自然なものにしていく。さらに自身が行う編集作業でも、必要でないシーンなどが削除され、より完成度の高いものが出来上がる。
是枝監督がフランスで撮った『真実』は、彼の脚本の素晴らしさが顕著な秀作だ。カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークという国際的スター3人が共演する豪華な作品だが、日本人監督が撮ったとは思えないほど自然なフランス映画になっているのが驚きだ。しかも、3人の俳優としての持ち味が見事に生かされている。
カトリーヌ・ドヌーヴ演じる大女優が「真実」というタイトルの自伝本を出版し、その出版祝いの名目で娘夫婦と孫がアメリカからやってくる。脚本家として活躍する娘(ジュリエット・ビノシュ)と母親(ドヌーヴ)とのわだかまりが、劇中劇として描かれる撮影中の主演映画(母娘物)を効果的に絡めて描かれる。日常会話の中で過去の母娘の関係があぶりだされる旨さと、重層的な構成が相乗効果となり、作品をよりニュアンスに富んだ魅力的なものにしている。
『万引き家族』のような社会性や深みはないが、是枝裕和監督の円熟した技量が味わえる逸品である。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。